6. 人の幸せをどのように定義するか   国連開発計画の人間開発より

 2007年 3月 3日掲載  2014年 1月10日再掲

 人間開発とはピンとこない言葉です。英語ではHuman Developmentで、この言葉の直訳となっています。人が幸せな人生を享受するための環境を数値化するもので、その構成要素として、(1)平均寿命指数、(2)教育指数、(3)GDP指数が用いられています。長生きし、長期間の教育を受け、高額の所得が得られれば、人(国民)は幸せであるとの定義です。それぞれの指標には最大値と最小値が決められていますので、得られた指標は絶対評価となります。この数値は多くの国で伸長しています。

 しかしながら、この指数に関して私は若干の疑問を感じています。
・ 現時点での幸せを述べるものであり、資源の枯渇問題等が問題化している現在においては、将来の幸せを保証するものではない。
・ 幸せには、社会システムが関係するその国の住みやすさや、心の豊かさも関係するが、そのような指標は入っていない(含めることが困難)。
・ 一国を考えたときには、男女間格差(別途、GDI、GEMとして述べられる)や所得格差(別途HPIとして述べられる)が考慮に入っていない。
・ 教育指標に関しては、その教育の質(深さ)までの評価は難しいと考えられる。
・ GDPに物価が考慮されているか?



人間開発の定義は次のようになっています。
http://www.undp.or.jp/hdr/
「開発の基本的な目標は人々の選択肢を拡大することである。これらの選択肢は原則として、無限に存在し、また移ろいゆくものである。人は時に、所得や成長率のように即時的・同時的に表れることのない成果、つまり、知識へのアクセスの拡大、栄養状態や医療サービスの向上、生計の安定、犯罪や身体的な暴力からの安全の確保、十分な余暇、政治的・文化的自由や地域社会の活動への参加意識などに価値を見出す。開発の目的とは、人々が、長寿で、健康かつ創造的な人生を享受するための環境を創造することなのである。」

これを具体的に説明するために、次の書籍から引用します。

書籍「人間開発報告書を読む(足立文彦、2006年12月、古今書院)」

人間開発指数(HDI)の構成

側面 長寿で健康な生活 知識 人間らしい生活
指標 出生時平均余命 成人識字率 総就学率 一人当たりGDP(US$)
重み 3/9 2/9 1/9 3/9
指数 平均寿命指数 教育指数 GDP指数


南アフリカの指標(例示、1990年当時)

指標 最高値 最低値 南アフリカ
出生時平均余命(歳) 85 25 48.4
成人識字率(%) 100 82.4
総就学率(%) 100 78
1人当りGDP(US$) 40000 100 10346

GDPはPPP US$(推定勤労者所得)

南アフリカのHDIの計算
(1)平均寿命指数=(48.4-25)/(85−25)=0.390
(2)教育指数
成人識字率=(82.4−0)/(100−0)=0.824
総就学指数=(78−0)/(100−0)=0.780
教育指数=2/3×成人識字率+1/3×総就学指数=0.809
(3)GDP指数={log(10346)−log(100)}/{log(40000)−log(100)}=0.774
(4)人間開発指数(HDI)=(平均寿命指数+教育指数+GDP指数)/3=0.658
となります。

それではいよいよ日本の人間開発指数。このデータによると日本人は年々幸せとなっています。次のURLを参照ください。

社会実情データ図録
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/1130.html




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