8. ニッケルの可採年数は大きくは変化していない   が、しかし・・・

 2007年 3月 9日掲載  2014年 1月10日再掲


 石油の可採年数はここ50年くらいの間、常にあと40〜50年は大丈夫と言われながら今までやってきた。しかし最近では、中国の旺盛なエネルギー需要により、石油の寿命があと何年もつかが国際的な関心事となってきている。その証拠に、石油の価格は第一次石油ショック以来価格上昇のトレンドを描き続けてきたが、特にここ数年間の値上がりは急激であった。
金属の耐用年数(可採年数)も昨日のブログで示したように、数字の上では猶予がない。最近、銅、ニッケル、亜鉛などの非鉄金属の価格もまた値上がりが大きいのも、このあたりが関係しているものと考えられる。

 実際の可採年数はというと次の図のように、ほとんど変化がない。この理由としては、まだ新しいニッケル鉱山が開発されていること、今まで採算が合わないとして放置されてきた鉱石よりニッケルを取り出しても、ニッケルの価格が十分にペイするほど高価になったこと、などが挙げられる。今までの搾りかすから再度搾り出すのであるから、価格が上がってきても当然と考えられる。

 下のニュースリリースでは、住友金属鉱山が、今までは採算性がないとして山積みにしていた低品位(約1%含量、従来処理していたものは約3%含量)のニッケル鉱石よりニッケルを取得すると報じている。HPAL法(エイチ・パル法)では鉱石を硫酸で処理してニッケルを硫酸ニッケルの形とし、そこから金属ニッケルへと導く。

 以上、見てきたように、表面上は価格の上昇のみで資源量に心配はないような錯覚を受ける。しかし、地球上の人口増加、生活レベルの向上による資源多消費型ライフスタイルへの変化、地球環境の悪化や資源の枯渇、などによりこれからの毎年はビックリするような大きな変化が現れてくるのではないかと考えている。

図 ニッケルの耐用年数(確認可採)
埋蔵量が増えて、消費量がそれほど増えていないので、耐用年数が伸びている。
環境省総合環境政策局ライフサイクル評価(LCA)、「鉱物資源使用」カテゴリーの特性化係数(2004年3月)から引用
(もとデータはUSGS(アメリカ地質調査所2002年))


住友金属鉱山のニュースリリースより
http://www.smm.co.jp/release/20050413.html
(※再掲載時点でリンク切れ)

「従来ニッケルは、硫化鉱およびラテライト鉱(酸化鉱)のうち高品位の部分(ガーニエライト鉱)を主な原料として生産されてきましたが、本プロジェクトは HPAL法(High Pressure Acid Leach:高圧酸浸出法)という技術の導入により、低品位ラテライト鉱(リモナイト鉱)からのニッケル生産を可能としました。住友金属鉱山はHPAL技術の確立によりニッケル資源調達の選択肢を増やし、世界トップクラスのニッケル製錬メーカーの地位を確固たるものとしていく所存です。」

フィリッピン コーラルベイ・ニッケル・プロジェクト




文書リストに戻る ホームに戻る