25. 伊藤ハム 井戸水中のシアン化合物は自ら作り出したものか? その根拠

 2008年10月30日掲載  2014年 1月11日再掲

 ここに示した再掲載記事は、5回にわたっての掲載を一箇所にまとめたものである。伊藤ハムが使用の地下水中にシアンイオン(青酸カリとして知られる猛毒)が自主検査で検出され、速やかに製品回収を行うべく、国の機関やマスコミへの情報公開を行った。だが、実際には地下水にはシアンイオンは含まれておらず、しばらくは原因が不明であった。筆者(私)は、このシアンイオンはその地下水の消毒に用いた次亜塩素酸(NaClO)が地下水中の有機物と反応して生て生じたものと結論した(10月30日)。そして、実際にそうであったことがその後の検討で判明した(12月5日)。企業および企業の担当者は、自身の仕事への専門性を高め、管理するシステムを作り、それを遵守することの大切さを教えられた事例であった。

 12月4日のNHKニュースによると、
 「これまでの調査の結果、地下水から不純物を取り除くために加える「次亜塩素酸ソーダ」について、保管する期間や温度管理などに問題があったため、成分が変化し、地下水の中の窒素化合物などと反応してシアン化合物が生成された可能性が高いことがわかりました。」

2008年10月27日掲載
 伊藤ハムの地下水シアン化物汚染による製品回収問題に思う         
2008年10月28日掲載
 伊藤ハム 消毒後の浄水より塩素酸を検出 こちらの原因は明らかだが・・・ 
2008年10月30日掲載
 伊藤ハム 井戸水中のシアン化合物は自ら作り出したものか? その根拠  
2008年12月 5日掲載
 伊藤ハム使用井戸水のシアン発生原因がやっとのことで明らかとなる     


まず、まとめとしての事の顛末は次のとおりです。詳細は上に示した各掲載文書へのリンクを利用してください。


2008年12月5日掲載

伊藤ハム・東京工場(柏市)での井戸水中シアン検出事件の時系列整理


本文
伊藤ハムの地下水になぜシアン(CNおよびCNCl)が検出されたかの理由が、伊藤ハムの10月25日の記者会見より約40日を経て明らかとなりました。

工場担当者による井戸水中のシアンの検出から、シアン発生原因の究明結果の報告までを時系列でまとめました。



伊藤ハムの東京工場(柏市)での事件の時系列整理

9月
 24日 最初に工場の井戸水からシアンが検出された日(サンプル水は18日採取)
     担当者は10月7日の水質定期検査の結果を待ってから本社へ報告と判断
10月
   7日 年に1度の井戸水水質の定期検査日
  15日 シアン検出の事実が工場長に伝えられる
  22日 工場長が本社にシアン検出の事実を報告
  25日 伊藤ハム・シアン検出の事実を記者会見で公表
  27日 柏市保健所 伊藤ハムの持ち込み地下水より塩素酸を検出
      基準値の倍の0.6mg/リットル、保健所は人体に影響ないとしている
      保健所は消毒薬の次亜塩素酸ソーダの分解物と推定
        3NaClO(次亜塩素酸ソーダ)
→ 2NaCl(食塩) + NaClO3(塩素酸ソーダ)
  29日 工場を止め安全の一斉点検
  29日 柏市 伊藤ハムの持ち込み地下水よりシアンは検出されず
11月
   4日 調査対策委員会 第1回会合
 委員長は藤巻正生東大名誉教授(元お茶の水大学学長)ら有識者6名
   8日 東京工場の従業員50名を他工場へ派遣(正社員200名中の50名)
      正社員以外の420名の従業員は給与保障で自宅待機
  10日 連結経常損益が赤字になる可能性があると発表
      (シアン問題、異臭問題による生産停止と製品回収、買い控え)
  11日 商品回収に4億2000万円のコスト増が見込まれると発表
      前期61億円の営業黒字が赤字に転落する可能性大と発表
      ハム・ソーセージの出荷量は前年同期比で3割減
  13日 柏市と水道水調達で合意 使用量の約4割に相当する1400トン/日程度
  18日 調査対策委員会で原因をつかめていない
      ソーセージなど約330万袋を自主回収する事態に
  21日 HACCPを厚生労働省に返上
  21日 柏市が水道水を供給すると発表(必要水量の1/3量)

12月
  4日 消毒剤(次亜塩素酸ソーダ)使用ミスが原因と推定(日本経済新聞 夕刊)
  5日 夕方7時のNHKニュース 伊藤ハム・調査対策委員会の正式発表
      柏氏の地下水には窒素分が多く含まれる(おそらく炭素分も多く含まれる) 十分な量の次亜塩素酸で処理すれば窒素分と炭素分は除去できるが、その量が中途半端に少ないとシアン(CNイオンおよびCNCl)が生成する。次亜塩素酸溶液が夏の炎天下で変質し、次亜塩素酸成分が少なくなったため、通常量で処理しても塩素酸ナトリウムの量が不足し、処理途中の状態となり処理水中にシアンが残った。 





2008年10月27日掲載


本文
25日にこの第一報をGoogleニュースで見た時は、また食の問題が発生! と、画面に踊る文字を読み返したが、事態の軽重はその場ではわからなかった。その後、9月24日の地下水検査時にシアンが基準値を超えていたことが伝えられ、続けて製品回収の異常事態となった。

本日午後6時のNHKニュースで、社長が事実を知ったのが事態発生から約1ヶ月後の今月22日、そして保険所に届け出たのが25日であることが報じられ、やっと時系列が呑み込めた。


伊藤ハムのホームページより引用

お詫びとお願い

 平素より弊社商品を格別にご愛顧賜りまして厚く御礼申し上げます。
 この度弊社東京工場で使用する地下水の自主検査の結果、一部の水源で、シアン化物イオン及び塩化シアンが基準値の0.01mg/Lを超える値(0.02〜0.03mg/L)となっておりました。
 このことによる人体への影響はないと考えておりますが、当該商品の自主回収をさせて頂くことに致しました。

                                                    引用終わり


この回収での費用発生は約3億円と見積もられているようであるが、マネジメントが機能していないとして、信用とブランド失墜による長期にわたる売り上げと利益の低下も無視できなくなるであろう。

トヨタ生産方式に7つの無駄がある。今回は、不良をつくるムダにあたり、トヨタであればアンドン(異常を知らせるライト)を点灯し、ナゼを6回繰り返してその事態が起こった根本原因が解決されてはじめて製造再開となる。

    作り過ぎのムダ  手待ちのムダ  運搬のムダ  加工のムダ
     在庫のムダ  動作のムダ  不良をつくるムダ

問題が発生した時にその原因を追及しなければ、事態を引き起こした原因は永遠に闇の中となる可能性がある。また、地下水もその流路を通って地中を流れていくのであるから、異常発見時には下流での地下水の利用者に警告を発する意味でも、早期の届け出が必要であったと考えられる。当然のことながら、ナゼを6回繰り返せばシアン化合物の発生原因の推定も付く。

シアン化化合物は、たとえば青酸カリ(シアン化カリウム)を飲んだ場合の致死量は、成人で150〜300mgであり、体内で分解されるので蓄積性はない。今回検出された量は、この致死量と比較した場合、非常に微量であったことは幸いであった。



繰り返される食の問題。ポイントは

  社内での報連相(報告・連絡・相談)            悪いニュースほど速やかに上層部に報告
  問題を発見した時に、速やかに製造を止める勇気を!  このような社風の醸成が求められます。


食の安全に関する不祥事が頻発する今日、科学技術振興機構(JST)の失敗知識データベースにも新たなカテゴリーを設ける必要があるのではないだろうか?

http://shippai.jst.go.jp/fkd/Search


なお、考えられるシアンの生成過程の一つはこのようなケースか。

http://highsociety.at.webry.info/200810/article_6.html



日経新聞の10月26日、27日記事より








2008年10月28日掲載

本文
千葉県衛生局が検査した伊藤ハムの使用水より、今度は塩素酸が見つかった(記事1)。塩素酸は浄水(井戸水)の殺菌に使用される次亜塩素酸ナトリウムが変化したもので、この原因ははっきりしている(記事2)。

伊藤ハムは操業を停止して安全点検を実施する(記事3)。しかし、シアン化合物については、柏市役所の担当者が近くにシアンを使用している工場の届け出はないと明言している。このことより、伊藤ハムでは地下水の汚染の根本原因を特定するに至らないか、特定できたとしても多大な費用と時間が費やされることになるであろう。

事件・事故はいつでもそうであるが、速やかに現場を確認! 現場100遍! 些細なことでも聞き取り調査を!
この基本を忘れると取り返しのつかないことになる。時間は待ってくれない。

伊藤ハムの現状を見ていると、昨日のブログでもふれたように、マネジメント上の問題は大きいと考えられる。しかしながら、伊藤ハムが最大の被害者であると感じられる。シアンを地下水に混入したのは誰か? 第一の加害者はこの犯人である。犯人を捕まえるには時期をすでに逸しているかもしれない。

あるいは、このようなケースはないとは思うが、分析の誤りである。ないものをあると誤認する。分析にはたまにあることである。事態が事態なので、複数回の分析で確認をされたであろうから、このようなことはないとは思うが。

今回の問題で改めて感じたのは日本の地下水の非常にきれいなことである。昨日のブログでもふれたように、0.01mg/Lのシアンが含まれた水を約10,000リットル、これは10m3であるが、これ以上飲んでシアンの量が成人の致死量に達する。飲む傍らでシアンの一部は体外に排出されるので、シアンで健康上の問題を起こすことは不可能である。むしろ水の取りすぎにより体調を壊すか溺れ死ぬことになる。約2リットルの水を一気飲みして死亡した例もある。

日本の水の美しさと水質基準の厳しさに改めて感動した。本日のNHK クローズアップ現代 で「親切が迷惑、日本の支援は」とのタイトルで、カンボジアでの井戸掘りNPO(ボランティア)活動の問題点が紹介されていた。カンボジアの地下水には、場所によって高い濃度でヒ素が含まれるが、これを知らずに親切心で日本のNPOが井戸を掘り、長年飲み水としたため、多くの住民がヒ素中毒にかかっているというものである。日本の地下水と同じ感覚で、水質検査をしないままに住民に引き渡してしまった結果である。

しかし、日本の地下にもヒ素が眠っていることはあまり知られていない。資料5である。まさにこの千葉県に眠っている。千葉県の地下水には資源としてのヨウ素も多量に眠っている。


なお、考えられるシアンの生成過程の一つはこのようなケースか。

http://highsociety.at.webry.info/200810/article_6.html


以下、記事より引用


記事1  こんどは塩素酸が検出される

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20081028ddm041040089000c.html

伊藤ハム地下水シアン化合物検出:地下水から塩素酸検出−−東京工場
 柏市保健所は27日、地下水から基準値(1リットル当たり0・6ミリグラム)の約2倍に当たる1・1ミリグラムの塩素酸を検出したと発表した。

 基準値を超える塩素酸が検出されたのは「3号井戸」の原水を次亜塩素酸ナトリウムで消毒した後の浄水。保健所に対し伊藤ハムは「次亜塩素酸ナトリウムはタンクにつぎ足して井戸水に混ぜて消毒していた」と説明。保健所は「古くなった次亜塩素酸ナトリウムが分解し、塩素酸が生成された可能性がある」とみているが「人体に影響を与えるレベルではない」としている。

※参考
   3NaClO(次亜塩素酸ナトリウム) → 2NaCl(食塩) + NaClO3(塩素酸ナトリウム)
水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に塩素を吹き込むことによりNaClO水溶液が得られる。通常はNaClOが12%含まれる水溶液として販売され、これを300倍から600倍に薄め、pH5〜6で使用する。
NaClO4が過塩素酸ナトリウム、NaClO3が塩素酸ナトリウム、NaClO2が亜塩素酸ナトリウム、NaClOを次亜塩素酸ナトリウムという。



記事2  千葉県の水質基準

千葉県は水質基準項目として51項目を定めている。
http://www.pref.chiba.lg.jp/suidou/suisitsu/setumei/kijun.html

シアン化物イオンおよび塩化シアン 0.01mg/L以下
  自然水中にはほとんど含まれていませんが、めっき工場、鉄鋼処理工場、都市ガス製造工場、塵埃焼却場の排水などから混入することがあります。

塩素酸  0.6mg/L以下
  消毒剤として用いる次亜塩素酸ナトリウムや二酸化塩素の分解生成物です。



記事3  工場を停止して安全点検

http://www.47news.jp/CN/200810/CN2008102801000629.html

伊藤ハム、東京工場の生産停止 地下水汚染で29日から一時
 伊藤ハムは28日、地下水からシアン化合物が検出された東京工場(千葉県柏市)の生産を29日から一時停止し、安全な商品供給体制について点検する、と発表した。



記事4 原因はやぶの中か?

http://www.j-cast.com/2008/10/27029320.html

周辺に使用工場見当たらず 伊藤ハム地下水「シアン」混入の不思議
シアン化物は主にめっき加工する過程で使われ、食用加工品を作る工場が原因で検出されるとは考えがたい。環境省地下水・地盤対策の担当者は、

「地下水にシアンが混ざるという例は、頻繁にあるものではありません。混ざるとしたら、工業用水しか考えられないです」
と話す。

伊藤ハムの工場周辺に、シアンを使っている工場があるのだろうか。工業用水の排出などを規制した「水質汚濁防止法」で、シアンを使用する場合は届け出ることが義務付けられている。ところが、柏市役所の担当者はこう答える。

「伊藤ハムの工場がある柏市根戸で、シアンを使っていると届け出ている工場はありません」
「弊社でシアンを使っていることもありません」
伊藤ハム広報担当者は、

「過去40年間、検出されたこともなく、混入経路はまだわかりません。井戸には鍵をかけて厳重に管理しているので、人為的に混入したとは考えがたいです。弊社でシアンを使っていることもありません」
といい、原因は外部にあるとしている。



記事5  千葉県地下水に含まれるヒ素とヨウ素

千葉県の地下水砒素濃度分布図
http://www.pref.chiba.lg.jp/syozoku/e_suiho/7_tikasui/pdf/chiba-as.pdf

記事2で、ヒ素およびその化合物として水質基準値は0.01mg/L以下。
半導体材料、顔料、農薬等の原料として利用されます。鉱山廃水、精錬排水、温泉等から混入することがあります。となっています。

世界のヨウ素の約40%が千葉県の地下水に含まれています。
http://www.npckk.co.jp/technology/iodine/prod.html#04





2008年10月30日掲載

伊藤ハム 井戸水中のシアン化合物は自ら作り出したものか? その根拠

 問題のシアンの生成原因は、井戸水中に存在する有機化合物(前駆体と呼ぶ)と、井戸水の消毒に使用した次亜塩素酸ナトリウムが反応して生じたのではないかと考えられる。

ことの顛末 40日を経てやっと原因が確定された!

新聞記事より事件の経過をまとめてみた
12月11日に伊藤ハムがホームページ上で事件の経過を報告したが、何かがおかしい!

千葉県衛生局の井戸水検査ではシアン化合物が検出されなかった旨は第1回で記した。同じ千葉県衛生局より興味深い論文が発表されていた。これは、平成15年5月30日付の厚生労働省令により、水道法水質基準が改正されるのに伴い、シアンの分析方法も変わるので、新分析法の確認をし、得られた知見を公表したものである。

  「井戸水の塩素消毒によって生成するシアン化物イオン及び塩化シアンについて」(2004年)
   http://www.pref.chiba.jp/syozoku/c_eiken/risousu/report/eisei_h/28-p23.pdf

この報告によると、シアン化合物の検出は、従来は「ピリジンピラゾン吸光光度法」が用いられていたが、より検出感度の高い「イオンクロマトグラフ−ポストカラム吸光光度法」となる。

水質基準では「シアン化物イオン(CN)および塩化シアン(CNCl)」が0.01mg/L以下となっている。検討結果によると、旧分析方法では井戸水よりシアンが検出されない場合でも、新分析方法で微量ではあるがシアンが検出される例が多くみられた。

ここがポイントであるが、新分析法でCNおよびCNClが全く含まれない井戸水に次亜塩素酸ソーダを加えるとCNおよびCNClが検出されるようになった。

この反応は次の通りである。

    前駆体(ある有機物) → 塩素によりCNイオンの発生 → 塩素によりCNClに変化

報告中に示されているデータは下表のとおりである。上の表が用いた井戸水(次亜塩素酸処理なし)の分析結果で、No.7とNo.9のKMnO4値およびTOC値は大きな値となっている。TOCはTotal Organic Carbonの頭文字をとったもので、この値が大きいと、有機化合物(有機化合物は炭素を含むのが特徴)を高い濃度で含んでいることを示している。

下の表で、KMnO4値およびTOC値が大きい場合(No.7とNo.9)、高い濃度のCNイオンおよびCNClが検出されている。No.9のCNClが18.4μg/Lは0.0184mg/Lのことで、水質基準の0.01mg/Lを超えた値である。

原子量というものがある。これは炭素を基準の12として各元素の質量比をあらわしたものである。炭素の原子核はは陽子6個と中性子6個よりできているので合計12.窒素は陽子7個と中性子7個よりできているので合計14。塩素は(陽子17個と中性子18個の合わせて35)と(陽子17個と中性子20個の合わせて37)の二通りの重さを持つものが3:1で存在しているので、その平均値は35.5である。

      CN (12+14=26) → CNCl (12+14+35.5=61.5)

とCNイオンが塩素と反応しただけでCNCl となり、その重量は2.4倍へと増加する。水質基準は「シアン物イオン(CN)及び塩化シアン(CNCl)」の合計が0.01mg/Lと重さで規定されているので、塩素を含むことにより規制物質の濃度は急激に大きくなることが分かる。

以上、シアン化合物の発生のメカニズムを見てきたが、残念ながら問題を引き起こした前駆体は存在するに違いないと、まだ推量の域である。この前駆体が井戸水から由来するものか、作業上のトラブルで誤って井戸水に混入したものかを見極める必要がある。

また、発表された、伊藤ハムのシアン化合物の量は、基準値の2〜3倍とあるだけで、CNイオンがいくら、CNClがいくらとの報道が必要であったと考えられる。

伊藤ハムとしては、問題が生じたときに速やかに三現主義(現場・現物・現実)により、ことの真相を解明する努力をする必要があったと。そうすることで、くみ上げた水のKMnO4値は? TOCは? CNイオンが含まれたか? CNCl が含まれたか? が明らかとなり、問題発生原因に大きく近づけた。










本文
やはり井戸水は汚染源ではなかった。10月25日の伊藤ハムの事件発表以来、約40日が経過してしまった。この問題の解決に外部の手を借りなければならなかったのは、技術力の不足、そして問題を発見した時の対応のまずさである。

原因に気づくか気付かないかは、問題を解決する気があるかないかということ、そして化学に対する理解ができているかどうか、すなわちやる気と実力の問題である。

原因は非常に些細なことであるが、これにより社会に与えた影響と生じた損失は計り知れない。他社において同じような状況が起こったとき、あわてずに論理的に考えてみることが大切である。最近世の中を騒がせている偽装や粉飾等の確信犯的な事件とは異なり、ある意味、得意な事件であった。教訓とするところは大きい。


http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20081204AT1G0400S04122008.html
(12月4日、日経)
引用の始め
伊藤ハム、工場用水にシアン化物 消毒剤使用ミスが原因と推定
 伊藤ハム東京工場(千葉県柏市)が基準を超えるシアン化物を含む井戸水を加工食品に使っていた問題で、同社が消毒剤の管理の不備や使用量の誤りが原因と推定していることが4日、わかった。地下水自体が汚染されている可能性は低いという。
                                      引用の終わり

http://www3.nhk.or.jp/news/t10015782751000.html
(12月4日、NHK)
引用の始め
これまでの調査の結果、地下水から不純物を取り除くために加える「次亜塩素酸ソーダ」について、保管する期間や温度管理などに問題があったため、成分が変化し、地下水の中の窒素化合物などと反応してシアン化合物が生成された可能性が高いことがわかりました。
                                      引用の終わり




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