クライメートゲート事件により、最近では地球温暖化に大気中のCO2濃度は関係はないのではないかと多くの人が考え始めている。また、太陽の活動が弱まり、現れるはずの黒点がしばらくは現れてこなかったこともあり、気候そのものが寒冷化へと向かっているとも信じられてきている。
そのような中で、国連と行政の対応は、京都議定書の決議を踏まえ、CO2を削減する方向で進み続けている。その結果として、鳩山元首相の2020年までに日本はCO2排出量を25%削減するとの声明が出たりする。西欧の多くの政治家は、きっとCO2の排出量には興味はなく、その排出権取引により莫大な金額が自国に誘導されることへの関心が高いようにも思われる(個人的な見解です)。とくに、多くの国において、排出権で利益が誘導されること、また、CO2削減を含む環境技術が無償で取得できる可能性があることもあり、CO2削減への熱いまなざしはここしばらくは消えることがないと考えられる。
そんな中、日本政府の音頭取りで、新日本製鉄は化学物質水溶液にCO2を吸収し、その後、その吸収液を約120℃の高温にまで加熱する方法で、JFEスチールはゼオライトなどの個体吸着材にCO2を吸着させ、その後、減圧とすることによりそのCO2を回収する方法を検討している。国家プロジェクトである。
このたび、JFEスチールが、CO2をハイドレートとすることにより排ガス中より単離する画期的な方法を編み出した。上で示した従来の延長線上では、CO2の回収費用は、回収CO2の1トン当たりどうしても6000円以上となってしまうが、この方法だと2500円程度になるとのことである。
ハイドレートとしては、メタンハイドレートが有名であるが、その他、多くの気体分子とハイドレートが作られることが古くより知られている。今回の技術は、その従来より知られている事柄をうまく利用したところにその特徴がある。ポイントは、CO2を含むガスを小さな気泡として水中に分散させたこと、JFEエンジニアリングが開発した寒剤を利用したことである。
現在、CO2排出権はCO2の1トンあたり欧州で1500円程度である。これに対し、今回の2500円はまだ割高であるし、さらに、分離回収したCO2を深海や地中深くに貯留するためにはさらに費用が掛かるので、結局はCO2の排出権を購入することで、日本の貴重な「円」が、海外へと流出していく可能性は大きい。これは、欧米諸国の思惑道理となる公算が強いということである。
ただし、今回開発した技術を、新興国に持っていくことができれば、回収CO2より肥料としての尿素(式1)を作ることができるので、世界的にみると人類に貢献する技術がこの日本で開発されたものと考えてよいのではないだろうか。
2NH3 + CO2 → NH2CONH2 + H2O 式1
JFEエンジニアリング ニュースリリース 11月18日 抜粋
二酸化炭素の超低コスト分離・回収技術を世界で初めて開発
〜独自の「ネオホワイト・ハイドレート法」で、コスト半減を実現〜
当社はこのたび、二酸化炭素をほぼ常温・常圧でハイドレート化し、分離・回収する技術の開発に、世界で初めて成功しました。
二酸化炭素を含む水を特定の圧力下で低温にすると、二酸化炭素のみがシャーベット状の固体(ハイドレート)になり、分離・回収が可能になります。このことは古くより知られていましたが、高圧・低温※1にするランニングコストが高いため、実用化は困難であると考えられていました。
当社は、二酸化炭素を微細気泡化して水と混合した上で、「ネオホワイト」※2を微量加えると、二酸化炭素のハイドレート化が促進され、それに必要な圧力・温度条件※3が大幅に緩和される現象を見出しました。
この結果、ランニングコストを大幅に削減できることになり、実プラント規模では、二酸化炭素トンあたり2,500円程度のコストでの分離・回収が可能になります。既存技術である化学吸収法と比べ、吸収した溶液から二酸化炭素を分離するために必要な熱エネルギーが不要のため、より広範な排出源に従来※5の半分程度のコストで適用できます。
今後は、火力発電所や製鉄所などの燃焼排ガスからの二酸化炭素分離・回収プラント(30〜100万t/年)を前提に、更なる大型設備での実証試験を目指します。
※1 : 例えば、温度5℃の場合、2.2Mpa以上にすることが必要
※2 : ネオホワイトとは、当社が独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同開発し、商品化している蓄熱空調システムの蓄熱材(水和物スラリ)の商品名。氷が0℃で固体になるのに対し、ネオホワイトは空調温度に適した5℃〜7℃でハイドレートを形成してスラリ状となり、冷熱を蓄熱する空調システムの冷房効率を大幅に高めることができる。ネオホワイト蓄熱空調システムは、既に国内外に多数の実績がある。
※3 : 圧力=0.11Mpa、温度=18℃
※4 : 鶴見製作所内のベンチ試験設備 処理能力:3t/日
|
|