日本経済新聞(10月25日)によると、経済産業省が、二酸化炭素(CO2)の排出を削減できるボイラーなどの設備を導入した中小企業に、2年分のCO2の削減量に見合う助成金制度を創設する、とある。
CO2の削減量1トンあたりの助成額は3000円。ヨーロッパで取引されている現在の排出権価格1500円程度の約2倍と中小企業に投資意欲を起こさせる金額設定となっている。
1000万円程度のバイオマスボイラー1台は、2年間で400トンのCO2排出量を削減できるので、補助額は120万円程度の計算となる。
従来から報道されているように、ヨーロッパやロシアの市場で排出権を購入して日本国内のCO2を削減したことにするのでは、その対価として現金が海外に流出するだけで、国内に何も残らない。一方、今回のこの試みは、国内の企業が製造したボイラーを国内の中小企業が購入し、その国内の中小企業に補助金が支給されるので、国内経済活性化に寄与する公算が大きい。もちろん、実際にCO2の国内排出量が減少する。
国は2020年までにCO2削減25%を目標に努力を続けている。その目的のために、鉄所から排出されるCO2を回収して地下深く、あるいは海底深くに貯蔵する研究を推進中である。しかし、このCO2の回収処理・貯蔵の目標金額は、なんとCO2 1トンあたり6000円である。6000円で1トンのCO2が排出されなかったことにするわけであるが、この6000円を達成するのはかなり難しいと考えられている。
CO2を回収するのにもエネルギーが必要である。たとえばの話であるが、CO2を1トン回収するためにエネルギーを使い、そのエネルギーのために新たに0.2トンのCO2が発生するようでは、結果的に日本国内で発CO2発生量は増加することになる。先に1トンのCO2は地中深く処理したので、結局差引0.8トンのCO2に対して6000円の処理費用が発生したことになる。排出権に比べて非常に割高なCO2処理費用となってしまう。
CO2の排出量を削減するという目的にはかなっているが何かおかしい。鉄鋼1トンを作るのにより多くのエネルギー(化石燃料)を使用する結果となっている。エコに良いことをしているつもりでも、結果的に思惑とは違った結果がもたらされることもある。排出権やエコ商品が金儲け(エゴ)の道具にならぬよう、国には綿密な計画立案が求められる。21世紀初頭のこの出来事を、後世の歴史書がどのように書くかには興味が持たれるところではある。 |
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