52. 企業理念や社是・社訓の有無とその真摯な実践は会社の価値を向上させる

 2008年11月12日掲載  2014年 1月13日再掲


企業理念や社是・社訓はその企業の行動規範を示したもので、その企業の企業倫理の根幹をなすものである。

当社の社員は何を基準として行動するか、またどの方向に力を束ねてゆくかは、会社の目指す目標に向けての社員のあるべき姿を示すものである。

この理念や社是・社訓により社風が形成されてくるし、社外からはその会社がどのような会社であるかの判断材料となる。また、社員にはあるべき好ましい行動様式を示し、企業倫理(コンプライアンス、日本では法令順守と訳される)を保つ上でも重要である。

ほとんどの会社が売り上げ目標・利益目標を持っているが、不思議なことに社是・社訓を持たない会社も多い。これは中小企業に限らず中堅企業にも見られる。また、社是・社訓はあるが、お題目に終わっている会社も多い。

次に掲げる社是・社訓は結構説得力がある。

企業理念
拡大発展、社会貢献、自己実現


経営理念
当社グループは、企業理念である「拡大発展、社会貢献、自己実現」を基礎として、全社員が「弛まぬベンチャースピリット」をDNAとして共有しております。

社是
弛まぬベンチャースピリット

十訓
一. お客様の立場に立て、究極の満足を与えよ
一. 夢と志を持ち、常にチャレンジせよ
一. 困難の先に栄光がある、逆境を乗り越えよ
一. 物事の本質を見抜け、雑音に動じるな
一. 原因があるから結果がある、公正に判断せよ
一. 積極果敢に攻めよ、守りは負けの始まりなり
一. スピードは力なり、変化をチャンスと思え
一. 自信を持て、謙虚さと思いやりを持て
一. 笑顔と共に明るくあれ
一. 正しくない事をするな、常に正しい方を選べ

あなたが社員ならばこの会社の風通しは良いと考えますか? これはグッド・ウィル・グループのものです。特に最後の項目に違反し、社会的な問題を引き起こしたのでしょう。


次はコムスンのものです。こちらも福祉関係の会社だけに、いいことを言っています。この誓いが設立当初(1988年)からのものであるか、1997年にグッドウィル・グループの資本参加を得るようになって後のものかは不明です。

コムスンの誓い
<企業理念>
・私達は、一人でも多くの高齢者の尊厳と自立を守り、お客様第一主義に徹します。
・私達は、明るい笑顔、愛する心、感謝の気持ちを大切にします。
・私達は、常にサービスマインドを心がけ、真心を込めて介護を行います。
・私達は、責任を持ってお客様のプライバシーを守ります。

コムスン(Community Medical Systems and Network)においては、この誓いの精神は現場では守られたものと信じますが、残念ながら企業倫理上の問題で2007年7月に会社を閉じることになりました。

グッドウィル・グループについては別の機会に、その破局への原因を考察してみたいと考えています。


さて、企業理念といったらやはりソニーでしょう。井深大さんの手になるもののさわりの部分をソニーのホームページより拝借いたしました。格調が高いですね。

http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/prospectus.html

東京通信工業株式会社設立趣意書 - 井深 大

会社設立ノ目的
一、 真面目ナル技術者ノ技能ヲ、最高度ニ発揮セシムベキ自由豁達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設
一、 日本再建、文化向上ニ対スル技術面、生産面ヨリノ活発ナル活動
一、 戦時中、各方面ニ非常ニ進歩シタル技術ノ国民生活内ヘノ即事応用
一、 諸大学、研究所等ノ研究成果ノ内最モ国民生活ニ応用価値ヲ有スル優秀ナルモノノ迅速ナル製品、商品化
一、 無線通信機類ノ日常生活ヘノ浸透化並ビニ家庭電化ノ促進
一、 戦災通信網ノ復旧作業ニ対スル積極的参加並ビニ必要ナル技術ノ提供
一、 新時代ニフサワシキ優秀ラジオセットノ製作普及並ビニラジオサービスノ徹底化
一、 国民科学知識ノ実際的啓蒙活動

経営方針
一、 不当ナル儲ケ主義ヲ廃シ、飽迄内容ノ充実、実質的ナ活動ニ重点ヲ置キ、徒ラニ規模ノ大ヲ追ハズ
一、 経営規模トシテハ寧ロ小ナルヲ望ミ大経営企業ノ大経営ナルガ為ニ、進ミ得ザル分野ニ技術ノ進路ト経営活動ヲ期スル
一、 極力製品ノ選択ニ努メ技術上ノ困難ハ寧ロ之ヲ歓迎、量ノ多少ニ関セズ最モ社会的ニ利用度ノ高イ高級技術製品ヲ対象トス、又単ニ電気、機械等ノ形式的分類ハサケ、其ノ両者ヲ統合セルガ如キ他社ノ追随ヲ絶対許サザル境地ニ独自ナル製品化ヲ行フ。
一、 技術界業界ニ多クノ知己関係ト絶大ナル信用ヲ有スル我ガ社ノ特長ヲ最高度ニ活用以テ大資本ニ充分匹敵スルニ足ル生産活動販路ノ開拓資材ノ獲得等ヲ相互扶助的ニ行フ
一、 従来ノ下請工場ヲ独立自主的経営ノ方向ヘ指導育成シ、相互扶助ノ陣営ノ拡大強化ヲ計ル
一、 従業員ハ厳選サレタル可成小員数ヲ以ッテ構成シ、形式的職階制ヲサケ、一切ノ秩序ヲ実力本位、人格主義ノ上ニ置キ個人ノ技能ヲ最大限ニ発揮セシム。
一、 会社ノ余剰利益ハ適切ナル方法ヲモッテ全従業員ニ配分、又、生活安定ノ道モ実質的面ヨリ充分考慮援助シ、会社ノ仕事即チ自己ノ仕事ノ観念ヲ徹底セシム。




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