71. 次の温室効果ガス候補 三フッ化窒素(NF3)の挙動が明らかに 次期半導体製造用ガスは何に変わるか?

 2009年 1月29日掲載  2014年 1月15日再掲


地球温暖化を促進している温室効果ガスは、京都議定書で二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)の6種類が定められている。使用量が多く、赤外線の吸収能力の高い化合物がその指定の対象となっている。

雑誌・現代化学2月号によると、第7番目の温室効果ガスとして三フッ化窒素が候補に挙がっている。寿命は二酸化炭素の5倍、地球温暖化係数GWPは17000とされる。GWPは同じ重さ当たり、二酸化炭素の何倍の温暖化効果があるかを示す係数である。

三フッ化窒素は、半導体や液晶の製造時にエッチングガスとして用いられるもので、昨年の生産量は4000トン。

2006年に大気に放出された量は140トンとなっているが、宇宙からの観測が可能となり、その量は4倍の563トンと算定された。同様に昨年の排出量は620トンと判明した。三フッ化窒素の620トンは二酸化炭素の1000万トンに相当する。日本は京都議定書に従い年間約7000万トンの二酸化炭素排出量を削減しなければならないので、この三酸化窒素のインパクトの大きさが実感できる。

三フッ化窒素は半導体を製造する上で欠かせない化合物で、その生産量も増えてきているが、ポスト京都議定書において生産に制約がかかる可能性が大きい。

フロン・ハロンの製造が禁止になったときには代替フロンが開発された。三フッ化窒素に変わる化合物の開発競争はすでに始まっていると考えられる。次はどのような化合物が用いられることになるだろうか。



http://www.shse.u-hyogo.ac.jp/kumagai/eac/echem/gwp.htm
ガス 寿命/年 GWP比 GWP
(20年)
GWP
(100年)
GWP
(500年)
●二酸化炭素 * Variable 1 1 1 1
●メタン * 12±3 21 56 21 7
●一酸化二窒素 * 120 >300 280 310 170
●ハロカ-ボン類 〜11700
・CFC-11 50 5,000 4,000 1,400
・CFC-12 102 7,900 8,500 4,200
・CFC-113 85 5,000 5,000 2,300
・CFC-114 300 6,900 9,300 8,300
・CFC-115 1,700 6,200 9,300 13,700
・Halon1301 65 6,500 5,600 2,200
・HCFC-22 13.3 4,300 1,700 520
・HCFC-123 1.4 300 93 29
・HCFC-124 5.9 1,500 480 150
・HCFC-141b 9.4 1,800 630 200
・HCFC-142b 19.5 4,200 2,000 630
・HFC-23 * 264 9,200 12,100 9,900
・HFC-125 * 33 4,800 3,200 11
・HFC-134a* 15 3,300 1,300 420
・HFC-152a * 2 460 140 42
・HFC-227ea 37 4,300 2,900 950
・パーフルオロメタン * 50,000 4,400 6,500 10,000
・パーフルオロエタン * 10,000 6,200 9,200 14,000
●その他の化合物
・四塩化炭素 42 2,000 1,400 500
・1,1,1-トリクロロエタン 5.4 360 110 35
・ジクロロメタン 0.41 28 9 3
・クロロホルム 0.55 15 5 1
・六フッ化硫黄 * 3,200 23900 16,300 23,900 34,900
三フッ化窒素 NF3 CO2の5倍 17000




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