本日(2009年1月17日)の日本経済新聞に「子供たちの数理力は高い」との記事があった。これは、3年おきに行われるOECDのPISA調査の結果である。日本は国際的にみて、まだ高い位置にある。
結果は平均値で比較されている。この結果を見て私が疑問と感じた点は、
1.各国の平均点が500点に並ぶような試験で比較ができるのか。
僅かな差で順位が変わっている。
2.平均点が高いので、記憶のアウトプット試験となり、思考能力の確認試験
とはなっていない。
世界の平均点が300〜400点となる、応用問題を作成すべきである。
3.詰め込み教育で無理をした結果なのか、無理をせずに得た実力なのか
判断できない。
現在の真の実力と将来の可能性が本当に判断できる試験問題となって
いるか。
4.あくまでも平均値である。その分布にも意味があるのだが示されていない。
5.ノーベル賞受賞の絶対数が多い上位5ヶ国は、人口当たりで見ても受賞数
は多いが、PISA調査の順位は決して高くはない。
以上の考察より、私は、ノーベル賞受賞数の多い米国〜スウェーデンにおいては、PISA試験としては低い順位となっているが、この試験では応用力や、目的に向けて努力する瞬発力を確認できていないと考えている。また、試験結果には分布があり、これらの国においては広い分布、すなわち優秀な人はどこまでも優秀であると推定する。たとえば、試験結果の上位10%を取り出して、国際比較をするとノーベル賞の数と正の相関関係が見出されるだろう。
この試験結果は15歳時点のものであるが、優秀な人の才能を伸ばす教育システムを国が取り入れているとすると、大学卒業時点において、それを取り入れていない国との差が大きく広がることは容易に想像できる。日本は誰でも平等、中間レベルに教育速度を合わせる(優秀な人にとっては逆平等となる)教育システムを止め、能力に応じた教育機会が与えられるシステムを構築すべきと考えるが、いかがであろうか? そうすれば、PISA調査で一喜一憂しなくても済むようになる。
PISA調査問題例
http://www.ocec.ne.jp/linksyu/pisatimss/koukaimonndai.htm
ノーベル賞の受賞数とPISA調査結果(57国・地区中のPISA順位)
国名 |
人口
百万人 |
これまでの
ノーベル賞数
(自然科学分野) |
OECDのPISA調査順位(2006) |
読解力 |
科学的
リテラシー |
数学的
リテラシー |
米国 |
299 |
227 |
- |
29 |
35 |
英国 |
61 |
75 |
17 |
14 |
24 |
ドイツ |
82 |
68 |
18 |
13 |
20 |
フランス |
29 |
61 |
23 |
25 |
23 |
スウェーデン |
9 |
16 |
10 |
22 |
21 |
スイス |
7 |
15 |
14 |
16 |
6 |
オランダ |
16 |
13 |
11 |
9 |
5 |
ソ連 |
143 |
13 |
39 |
35 |
34 |
日本 |
128 |
12 |
15 |
6 |
10 |
日本経済新聞 1月17日 子どもたちの数理力は高い
物理学者・俳人 有馬朗人
社会実情データ図録 学力の国際比較
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