104. ドバイの1000メートルビル 世界的景気減速の余波を受けて建築作業を1年休止

 2009年 1月20日掲載  2014年 1月20日再掲


いよいよあと1時間で米オバマ大統領の就任演説がワシントンで始まる。アメリカが世界にばらまいた負債の回収は困難であると考えられるが、どのように内需拡大に向けて歩みだすかが興味が持たれるところである。

さて、中東ドバイも世界的な景気減速の影響を急激に受け始めた。ドバイ政府系不動産開発会社キナールが開発したパーム・ジュメイラの不動産価格は9月以来40%近く下落したそうである。バブルの崩壊と見てよいのではないか。



原油価格も下落してきており、資源を持つ産油国といえどもしばらくは世界経済の浮上を待つことになるだろう。住友化学はサウジアラビアでのラービグ計画に1兆円を投資している。今年は1バレル=50〜75ドルとみているとのこと。いよいよ、本年の3月に設備が稼働を始める。物資の高騰した時期に建設したこの設備が、どのように利益を生み出していくか。また、需要収縮が起こっている世界に向けてフル生産ができるかに興味が持たれるところである。


日本経済新聞 1月18日
ドバイ政府系投資会社、人員10%削減 金融危機で
 アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの政府系投資会社イスティスマルは18日、金融危機に伴う市場環境の悪化を受け、人員全体の10%に相当する13人を削減したと発表した。

共同通信 1月18日
千メートルタワー、1年建設延期 ドバイ、金融危機受け
 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで最大手の不動産開発会社ナキールは18日までに、世界最高となる高さ1000メートル以上の超高層タワーの建設計画を1年間延期すると発表した。
 ナキール社はタワーの基礎工事を1年後に再開するとしている。現時点の工事の進ちょく状況は不明。延期について、同社は「現在の市場環境をより正確に反映し、需要に応じた供給を行うための事業計画の調整だ」と説明している。

フジサンケイ・ビジネスアイ 1月19日
開発事業打撃 損失2・5兆ドル 中東の湾岸諸国、金融危機で
 昨年の金融危機発生から4カ月間に中東のペルシャ湾岸諸国で発生した損失は2兆5000億ドル(約226兆8500億円)−。湾岸地域の開発事業の60%が延期か中止に追い込まれたという。
 オマーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイなどでは、原油の下落が歳入に響き、2010年には赤字に転落する公算が高まっている。
 世界最大級のSWF、クウェート投資庁は08年1月にシティグループに30億ドル、メリルリンチに20億ドルを出資。同様にドバイのSWFも07年11月にシティグループ株75億ドル相当を購入していた。米シンクタンクの外交問題評議会はUAEのアブダビのSWFは1250億ドルに相当する損失を出したと試算している。

AFP BBNews 1月7日
繁栄の夢ついえて、ドバイの街から消える外国人労働者
 アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイ(Dubai)の近年の脅威的な経済成長は数百万人の雇用を創出したが、さらなる繁栄の夢に突然の終止符が打たれた。
 人口の大半を占める外国人労働者たちの多くは解雇通告を受け、国外に退去するための準備に追われている。
 政府系不動産開発大手、ナキール(Nakheel)は前年11月末に従業員の15%に当たる500人を解雇した。
 ドバイでは過去数年間、不動産が飛ぶように売れたが、世界的な信用収縮で投資家や債権者がドバイの市場から逃げるように姿を消していくなかで、需要は急激に落ち込んだ。
 建設大手のAl-Shafar General Contracting社は今月初め、前年9月以来の受注額が30億ディルハム(約760億円)落ち込んだこともあり、1000人の人員削減を進めていると発表した。
 「ブルジュ・ドバイ」建設を手がけた不動産開発大手エマール(Emaar)は、前月に100人を解雇したと伝えられている。
 人員整理の波は、金融部門にも及んでいる。例えばShuaa Capital投資銀行は、行員の9%にあたる21人を解雇した。




さらに、
2009年1月23日掲載

世界金融危機はドバイ等のバブル崩壊に続き王族の個人資産にも

昨年の原油の高騰を受け産油国に多額のオイルダラーが流入したが、その多くは米国の投資会社を通して不動産や先物、株式に投資されたものと考えられる。

産油国もピークオイルを超え、資源の切り売り状態に入った。得られたマネーを将来に備えて生かすべく、生産財資本や不動産、あるいは海外の有形無形財産へと形を変えようとしている。

そんな中で今回のニュースである。米国発の世界金融危機は月が進むにつれてその様相が深刻となってくる。裕福であるはずの産油国王族の損失は今回のニュースを走りとして、これからも続くものと考えられる。

産油国も損をしたとなると今回のゲームは誰が勝ったのか。信用収縮で世界の富の総額は小さくなるであろうが、その小さくなったトータルに見合う過去のある時点での富の分布を見ると、案外、勝者は今回の原因を作りだした米国であるかもしれない。なぜなら、米国民が自ら生産する以上に消費をした(食い逃げをしかかっている)結果が今回の世界金融危機であるのだから。


日本産業新聞 1月22日





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