119. 本日はノーベル賞の授賞式 鈴木・根岸両教授の受賞を日本の発展に結びつけるにはどうすればよいか?

 2010年12月10日掲載  2014年 1月20日再掲


いよいよ本日、12月10日はノーベル賞の授賞式である。鈴木先生、根岸先生にとっては待ちに待った日が来たことになる。

さて、日本のノーベル賞受賞者数は少ないように思っていたが、国別で比較すると、2008年時点で世界第8と健闘している。本年はさらに2名の受賞者が加わった。順位は変わらないが、順調にその数を増やしていっている。特に、2000年以降は平均すると、1年に一人のペースで受賞者が増えていっている。

一方、この受賞者を民族でみると、ユダヤ人の受賞が圧倒的である。ユダヤ人の人口は世界で1300万人と、日本の人口の約10分の1であるが、その受賞者の数は非常に多い。本年、物理学賞を受賞するアンドレ・ガイム先生もユダヤ人だし、また、鈴木・根岸両教授を指導し、さらにノーベル賞候補として推薦もしたハーバート・ブラウン博士(1979年、ノーベル化学賞)もユダヤ人である。

ユダヤ人の約5百数十万人はイスラエルに住み、またほぼ同数がアメリカ合衆国に住むといわれる。第2次大戦前は、ヨーロッパやロシアに多くのユダヤ人が定住していたが、迫害を受け、その多くがアメリカ合衆国に移住し、またイスラエルの建国と同時に、神との約束の地に帰ったユダヤ人も多くいた。

ユダヤ人は歴史的にしいたげられた民族ではあるが、彼らのいるところの経済と科学は発展し、しかも文明が高まっていくというのは皮肉なものである。ユダヤ人好みのジョークの世界が現実にそこにはある。そして、現代の社会においては、ユダヤ人が多く住むアメリカ合衆国が、衰えたとはいえ、まだ栄華を極めているのである。

ユダヤ人がなぜこれだけ多くのノーベル賞を受賞したのか。そして、その受賞を勝ち取ったユダヤ人の性格や生活信条などに興味が持たれるところである。そして、さらにそれらが、日本のノーベル省受賞者とオーバーラップするところを探し出してゆけば、日本の低迷した教育現場と、衰えつつある科学技術や経済力を救い上げる手立てが見つかるのではないかと考えるところである。20年という非常に長期戦となることは覚悟する必要があるが。


以下の表はWikipediaからの引用、あるいはその加工による












さらに、
2010年10月6日掲載

ノーベル化学賞に鈴木章さん(北海道大学名誉教授)と根岸栄一さん(パデュー大学教授)

日本人2名がノーベル化学賞を受賞した。快挙である。お二人とも一般にはあまり知られていないかもしれないが、有機化学において炭素と炭素を結びつける、いわゆるカップリング反応を開発したことで有名だ。とくに、鈴木章教授はホウ素を利用する鈴木カップリングにその名を残している。この反応が見出されてから、合成できる化合物の範囲が広がった。

鈴木教授は米国のパデュー大学に留学され、ホウ素の化学で高名をはせたH.C.ブラウンに師事したとのことである。この流れを発展させて今回の受賞となった。

根岸教授はその大学に在籍で、カップリング反応を行った(以下を参照)。



毎日jp 10月6日

ノーベル化学賞:鈴木章さん、根岸栄一さんら3人が受賞
 スウェーデンの王立科学アカデミーは6日、10年のノーベル化学賞を、医薬品や工業製品の製造に欠かせない有機化合物の革新的な合成法を開発した鈴木章・北海道大名誉教授(80)、根岸栄一・米パデュー大教授ら3人に授与すると発表した。ノーベル賞の日本人受賞者は、米国籍の南部陽一郎氏を含め計18人、化学賞の受賞者は計7人になる。




鈴木章(Wikipedia)

パラジウム触媒を用いて有機ハロゲン化合物と有機ホウ素化合物を結びつける「鈴木・宮浦カップリング」を発見。抗がん剤やエイズ特効薬、液晶の製造に活用されるなど、有機合成化学や材料科学などの広い分野に大きな影響を与えた。

1959年、北海道大学大学院理学研究科化学専攻博士課程を修了。その後、理学部で2年半、工学部で32年半北大で勤務した。1963年から3年間、アメリカ・パデュー大学のハーバート・ブラウンのもとで有機ホウ素化合物の研究を行う。このときの経験が、後の鈴木・宮浦カップリングの発見につながった。

1994年3月に北大を停年退官した後は、北大名誉教授となった。その後岡山理科大学、倉敷芸術科学大学の教授となり研究を続けていた。2002年倉敷芸術科学大学を退官した。


※以下にクロスカップリングと出てくるのは、
  AとBという2つの種類が違う化合物を科学的に結びつけるという意味です。

鈴木・宮浦カップリング(Wikipedia)

鈴木・宮浦カップリング(すずき・みやうら—、Suzuki-Miyaura coupling)は、パラジウム触媒と塩基などの求核種の作用により、有機ホウ素化合物とハロゲン化アリールとをクロスカップリングさせて非対称ビアリール(ビフェニル誘導体)を得る化学反応のことである。鈴木カップリング、鈴木・宮浦反応などとも呼ばれ、芳香族化合物の合成法としてしばしば用いられる反応の一つである。本研究の成果より、鈴木章が2010年のノーベル化学賞を受賞した。




根岸栄一教授

有機亜鉛・有機アルミニウム・有機ジルコニウム化合物を用いるクロスカップリング反応の開発

いずれも根岸クロスカップリングと呼ばれる人名反応として認知されており、現在でも世界中の合成化学者に広く使われる反応となっている。

根岸クロスカップリング





20:19 日本化学会より会員あてにメールが届きました。

【1】日本化学会からのお知らせ
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日本化学会 会員 各位

先ほど2010年のノーベル化学賞が発表され、本会会員を含む、以下の3名の方に
授与されました。

【受賞者】
 Richard F. Heck氏(米Delaware大学名誉教授)
 根岸英一氏(米Purdue大学教授)
 鈴木 章氏(北海道大学名誉教授)

【受賞対象】
 for palladium-catalyzed cross couplings in organic synthesis
 (有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング反応に対して)

受賞者3名のうち、2名が日本人であり、この受賞は日本の基礎化学のレベルの
高さを示すものであります。
本会会員である根岸先生ならびに鈴木先生のご受賞を心よりお喜び申し上げます。

                    日本化学会 会長 岩澤 康裕



もう一人の受賞者

リチャード・ヘック(Wikipedia)

リチャード・フレッド・ヘック(英: Richard Fred Heck、1931年8月15日 - )は、アメリカ合衆国の化学者。デラウェア大学名誉教授。ヘック反応を開発した。2010年にノーベル化学賞受賞。

略歴 [編集]
マサチューセッツ州スプリングフィールド生まれ。1952年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)卒。1954年、同校博士課程修了(S・ウィンスタイン教授)、スイスのチューリッヒ工科大学(ETH Zurich)博士研究員(V・プレログ教授)。1956年、ハークレス・パウダー社研究員。1971年、デラウェア大学教授、1989年に退職。

受賞歴 [編集]
2006年 - アメリカ化学会ハーバートブラウン賞
2010年 - ノーベル化学賞(有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング)

※ ここにも鈴木章教授、根岸栄一教授が師事したハーバート・ブラウンの名がでてきます。



ヘック反応(Wikipedia)


ヘック反応(ヘックはんのう、Heck reaction)は、パラジウム錯体を触媒としてハロゲン化アリールまたはハロゲン化アルケニルでアルケンの水素を置換する反応である。



例えば、ヨードベンゼンをアクリル酸メチルと酢酸パラジウムを触媒として反応させると、アクリル酸メチルのβ位の水素がフェニル基で置換されてケイ皮酸メチルが生成する。






さらに、
2010年10月8日掲載

ノーベル化学賞でパラジウムが重要触媒と伝えられたせいでもないが、パラジウムが9年ぶりの高値に

1989年のパラジウムを用いた常温核融合騒ぎのときにもそんなに上昇しなかったパラジウム価格が、9年ぶりの高値を付け、1トロイオンス(31.103グラム)当たり600ドルを超えたと日本経済新聞が伝えている。

最近の貴金属の高値は、ドルやユーロの価値が下落し、株式も振るわず、仕方なく実体経済に資金が流れた結果である。今回のパラジウムを触媒とするカップリング反応でのノーベル賞と時期が一緒になったのは偶然ではある。

2001年の高値は驚くなかれ、約1080ドル/トロイオンスとなっており、貴金属であるパラジウムの価格が乱高下している。先ごろ、中国からレアアースの輸出が止められて大きな問題となったが、貴金属も同様である。

産業界の多くのシーンで有用とされる貴金属価格の乱高下に日本企業は悩まされることになりそうだ。




日本経済新聞 10月8日





パラジウム価格の長期チャート





パラジウム(Wikipedia)

自分の体積の 935 倍もの水素を吸収するため、水素吸蔵合金として利用される。 加工のしやすさから電子部品の材料としても使われたが、供給シェアの6割をロシアに依存しており、価格が不安定なことからニッケルなどの金属への代替が進められている。

特筆すべきは歯科治療(インレー)に使われる合金としての利用が挙げられる。 いわゆる銀歯は金銀パラジウム合金で、20%以上のパラジウムを含有する。

貴金属として装飾品にも利用され、ホワイトゴールドの脱色用割り金として利用される。近年、高騰してしまったプラチナ、アレルギーを起こす可能性のあるホワイトゴールドに替わって、パラジウムをメインに使用したジュエリーが出始めている。ただしパラジウムも歯科用貴金属においては比較的アレルギーを起こし易い貴金属であることが知られている。

触媒として [編集]
工業的には自動車の排気ガス浄化用の触媒(三元触媒)やエチレンからのアセトアルデヒドの合成(ワッカー酸化)に用いる触媒など、様々な反応の触媒として使われている。有機合成分野においては接触還元の触媒として、活性炭に担持させたものが常用される。またホスフィン錯体は、クロスカップリング反応やヘック反応など炭素ー炭素結合生成反応の触媒として重要である。




常温核融合(Wikipedia)

1989年にイギリス・サウサンプトン大学のマルチン・フライシュマン教授とアメリカ・ユタ大学のスタン・ポンス教授が、この現象を発見したと発表した[1]。この発表においてマルチン・フライシュマン教授とスタン・ポンス教授は、重水を満たした試験管(ガラス容器)に、パラジウムとプラチナの電極を入れ暫らく放置、電流を流したところ、電解熱以上の発熱(電極の金属が一部溶解したとも伝えられた)が得られ、核融合の際に生じたと思われるトリチウム、中性子、ガンマ線を検出したとしている。




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