203. 尊敬あたわざる企業 それは人材を使い捨てにして経営者が私腹を肥やす「ブラック」企業

 2009年12月29日掲載  2014年 4月15日再掲


12月25日のJCastニュースは失業率が大幅に増えていると報じている。

深刻な雇用悪化 卸売・小売業がガタ落ち

雇用環境の悪化は深刻さを増している。総務省が2009年12月25日に発表した労働力調査によると、11月の完全失業者数は331万人と1年前に比べて75万人増加で、13か月連続で増えた。勤務先の人員整理や倒産などで失業した「勤め先都合」は49万人増、「自己都合」は7万人増えた。就業者数は131万人減って6260万人となり、22か月連続でマイナスとなった。

 いま、東京では公設派遣村(毎日jp)がニュースとなっているが、一度職を失うと新たな就職先はなかなか見つからない。新卒の大学生や高校生でさえ、職が見つからずに苦戦している。

 いまや、企業による派遣社員切りからもう一歩進んで、社員の早期退職勧告が日常茶飯事となってきた。関連するニュースは毎日のように新聞紙上をにぎわしている。しかし、日本や先進国においては、社員に大きな落ち度がない限り、一度雇った社員をクビにすることは非常に難しい(ことになっている)。人員削減を実施するためには、その手順があり、この手順から外れるようなことがあると、不当労働行為として労働基準監督署より勧告を受けることになる。


2009年6月30日のブログに記したように、人員解雇に至る条件は次のとおりである。

人員削減にいたる条件
  整理解雇
    1.人員削減が会社存続のために必要
    2.人員削減を避けるために最大限の努力をしたこと
    3.人員削減の対象者の選定に合理性があること
    4.労働者や組合に対して十分な説明責任を果たすこと
  早期希望退職制度の活用
    1.企業による実施決定
    2.労働者による応募


6月にこのブログを書いたときは、友人のご子息が大阪市にある従業員数約300人強のコンピュータ・プログラミング会社をクビになったとの話を聞いたときであった。それから、すでに6ヵ月。この不況下に再就職もままならず、ご子息は就職先探しの毎日のようである。話を伺ってから6ヵ月、少しひどい話であるので黙っていられなくなった。

ことの顛末は次のようである。

2007年
 大学の4回生 この歳は企業が人材を求める。学生にとっては超売り手市場
 コンピュータ・プログラミングを仕事にしたいとのことですぐに就職が内定する
 ご両親はもっと大きな会社を受ければと言ってみたが、それ以上就職活動はせず
2008年4月
 入社
 社員数が300人強であるので、中小企業には当てはまらないが、
 入社してみてわかったことは、この会社が実質的には派遣会社であるということ
 プログラムの組み方の簡単な講義を受け、企業へと派遣される
2009年1月
 リーマンショックの影響で、派遣先より多くの社員が返ってくる(遊んでいる状態に)
2009年3月中旬
 会社が整理解雇の準備を始める
   売上と利益が共に前年度の6割に落ち込みそうである旨、社員に通知
   出勤日を減らし、その分給与も下げると通告
   休みの日には協業でないアルバイトは許可すると通告
2009年3月下旬
  突然に4月末で辞めるよう解雇予告
   ご両親は、この退職勧告は遵法ではないので、退職勧告を拒否する旨をご子息に指示
   解雇対象をどのように選んだかはついに告げられることがなかった

この会社は、解雇に至るプロセスを実に、たった2週間で走りぬいた。手慣れたものである。

このときに解雇予告を受けたものは、同期入社の約半数で、その多くは大阪府外からの通勤者と聞いている。通勤費節約のためか(みみっちい話ではあるが。それとも私の邪推か)。

2009年4月末
  退社  退職に当たっての補償金なし。
       3年以上勤務しないと退職金がないとの社則を理由に退職金もなし

さらに、おまけがついている。
苦しかったはずの、この会社。5月に入ってすぐに新人を募集したのである。


まとめてみると、この会社の本質は、社員として雇い入れた人材(人員?)をフローとして使い、そのフローがだぶついてくるとすぐに人員解雇して帳尻を合わせる。そして、人員が不足すると、また安易に雇い入れる。この繰り返しで生き延びている。

この方式では、人材が育つことは期待しにくい。派遣先の企業へいってもお手伝いで終わる可能性が強い。実際に社員構成は年配のおじさんがたと若手社員で、中堅層はいなかったそうである。なんという、人材の浪費であろうか。このような企業の存在が許されること自体、監督官庁の怠慢ではないかと考えられるがどうだろうか。一応の会社としての体裁は整っているからよいのであろうか?

この企業名に「ブラック」のキーワードを付け加えて検索すると、非常に多くのサイトが出てくる。前途有望な学生諸君は、就職する前に希望する会社名の後ろに「ブラック」のキーワードを付け加えて検索してみることをお勧めする。






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