355. 18世紀の亡霊「ホメオパシー」が足かけ4世紀を生き延びたのちに、否定される

 2010年 8月27日掲載  2014年 5月 5日再掲


19世紀に生まれたホメオパシーという概念が、その効果については議論が百出したこととは思うが、結局は21世紀の今日まで治療法として生き延びてきた。今回の英断が、ひとつの「神話」を否定することになれば、西洋医学にとっては一歩前進となるか。



asahi.com 8月27日

ホメオパシー否定の談話、助産師会・薬剤師会も賛同

 日本学術会議が民間療法「ホメオパシー」の科学的根拠を全面否定する会長談話を出したのを受け、日本助産師会と日本薬剤師会も26日、賛同する考えを表明した。

 日本助産師会は「会員に対し、助産業務としてホメオパシーを使用したり、すすめたりしないよう徹底する」ことを決めた。山口市では、ホメオパシーを実践する助産師が女児にビタミンK2を与えずに死亡したとして、訴訟になっている。

 日本薬剤師会も「効能・効果が科学的に確認されていない『医薬品類似物』が医療現場で使用されることは、重大な問題だ」と指摘した。





 Q ホメオパシーって?

 A ドイツのハーネマンという医師が18世紀末、生み出しました。病気と似た症状を引き起こす物質を服用して病気を治すとされる療法です。例えば熱が出た時は、顔が赤くなって熱が出たかのような症状を起こす植物のベラドンナを活用します。体は熱が来たと判断し、自然治癒力で熱を下げようとします。

 Q 症状を起こす物質って?

 A レメディーと呼ばれる錠剤です。原料はトリカブトなどの植物、ハチなどの動物、鉱物など数千種類あります。その物質を何回もかくはんして水などで薄めたものを服用します。元の物質が検出できないほど薄まっていますが、実践する人たちは「水がその物質を記憶しており効果がある」と主張しています。

 Q 本当に効果あるの?

 A そこが議論になります。現代医学では、「元の物質がほとんど残っていないのに、水が記憶するというのは荒唐無稽(むけい)な主張で科学的な根拠はない」(唐木英明・東大名誉教授)や「鍵となる概念の多くが現代科学の常識とかけ離れている」(杉森裕樹・大東文化大大学院教授)という意見が大半です。




ホメオパシー(Wikipedia)

ホメオパシーの問題点は、その科学的裏付けが全く存在せず、臨床においても有効性が統計的に(つまり科学的に)全く立証されていないことである。実際、ホメオパシーは数百年前に立てられた「思想」であり、実際の治療効果を疑問視する医者は少なくとも100年以上前からすでに存在した。

2010年8月24日、日本学術会議はホメオパシーに関する会長談話を発表した。その声明で日本学術会議会長の金澤一郎は、

「科学的な医療改革・医学教育からのホメオパシーの排除により、質の高い現代医療が実現した」
「効果があるとする過去の論文は全て誤り」
「(ホメオパシーに)治療としての有効性がないことは科学的に証明されている」
「水の記憶などとは荒唐無稽」
「欧米では(ホメオパシーを)非科学的であることを知りつつ、信じる[42]人が多いために排除することが困難な状況」
「現段階でホメオパシーを信じる人は(日本国内では)それほど多くないが、医療現場から排除されないと『自然に近い安全で有効な治療という誤解』が広がり、欧米と同様の深刻な事態に陥ることが懸念される」
と指摘。「科学的根拠は明確に否定されており、医療関係者が治療に用いることは厳に慎むべき行為であり、多くの方に是非御理解頂きたい。」とした。




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