388. 「読みたい本 中身で検索」 さてその実力は 「伊孚九」での確認結果

 2010年10月 9日掲載  2014年 5月 5日再掲


日本経済新聞(10月7日)に「読みたい本 中身で検索」との記事が掲載された。書籍の内容を直接記事より知ることができる、つまり部分的とはいえ本そのものを見ることができる方法の紹介である。次のようにある。

アマゾンジャパン なか見!検索
 和書13万冊が登録済み。うち6~7割が全文を検索でき、残りは目次や本文最初の6ページなど公開。洋書は53万冊以上を登録

米グーグル ブック検索
 数万冊規模の和書が登録済みで、原則すべて検索できる。出版社が提供した書籍は月間全ページの2割まで閲覧可能。世界で1200万冊が登録

国会国立図書館/近代デジタルライブラリー
 デジタル化した39万冊のうち、国会図書館のホームページで17万冊を公開。全文検索はできず、署名や著者、目次などが検索対象。著作権が切れた書籍に限定し、書誌情報のほか目次までを公開


では、その実力のほどを確認してみよう。国会図書館は著作権(著作者の死後五十年又は著作物の公表後五十年若しくは創作後五十年の期間)が切れた書籍を対象としているので、少し古くなじみの薄い人物ではあるが、南宗画(なんしゅうが)の画家「伊孚九(い・ふきゅう)」を例にとって、各検索について確認していく。


Google
 ”伊孚九”で8310件がヒット。””は文字列を固定化するための命令記号。また、Googleで画像検索すると、伊孚九の多くの作品が見つかる。






アマゾンジャパン なか見!検索
 アマゾンの書籍検索で「伊孚九」はヒットなし。「南宗画」で40件ヒット。そのうち、とくに関係しそうなものは次の一冊。
 日本の南画 (世界美術双書) [単行本]
この中身検索をしてみると、14ページ目に伊孚九に関する記述があることが分かる。残念ながらこのページは公開されていない。





米グーグル ブック検索

 Google書籍での検索となる。「”伊孚九”」で約500件のヒットとなる。ヒット結果は次のように表示され、各ヒット項目をクリックしていくと非常に多くの知見が得られる。有用なサイトである。





国会国立図書館/近代デジタルライブラリー

 次の4件がヒットしてくる。
1. 郷土先賢列伝 / 長崎市小学校職員会編,長崎市小学校職員会, 大正5
2. 南宗名画大観 / 新時代社編,新時代社, 大正14
3. 名画精鑒 / 尚美会編,尚美会, 大正6
4. 渡辺崋山遺墨帖 / 崋山会編,崋山会, 明44.3

2.をクリックして目次検索に入ると次の項目がある。
 第七十四圖 山水圖 同 羅牧 同 林屋秋嶺君 [83コマ]
 第七十五圖 溪山小築圖 同 翟大坤 大阪 阿部房次郎君 [84コマ]
 第七十六圖 山水圖 同 伊孚九 同 同 [85コマ]
 第七十七圖 松石圖 清 改琦 北京 陳漢茅君 [86コマ]
 第七十八圖 淨名居士圖 同 羅聘 東京 山本二峯君

各項目から本文に進めると、次の書籍の画像が出てくる。





「伊孚九」という、一般にはあまり知られていない南宗画家を例に検索例を示したが、検索項目の時代背景を踏まえながらこの3者を使いこなすことにより、今まで得ることのできなかった多くの知見を得ることができる。



伊孚九(Wikipedia)

伊孚九(い ふきゅう、1698年-1747年?)は、中国清代中期の貿易商・画家。貿易商として長崎に度々来日し南宗画の画風を伝えた。池大雅や桑山玉洲らが私淑し、その後日本の文人画壇に広まった。

諱を海、孚九(桴鳩)は字。号は莘野・匯川・成堂(也堂)・雲水伊人などと称した。江蘇省蘇州府山塘の人。

略伝
兄韜吉から信牌(信任状)を受け継ぎ、享保5年(1720年)に初めて長崎に来舶。以降、延享4年(1747年)までに6度ほど渡航した。主に馬を商う貿易商で、清朝国禁の軍用馬を幕府の御用馬として舶載してきた功労により褒賞を受けた記録が残されている。

余技として南宗画風の山水画をよくした。長崎の清水伯民が門弟となっている。桑山玉洲は『絵事鄙言』で「舶來清人中の逸格」と絶賛。また『近世名家書畫談三編』でも北宗画を伝えた沈南蘋とともに最上位に置かれている。池大雅や野呂介石、悟心元明らが、私淑し大きな影響を受けた。

孚九の名を全国に広めるに『伊孚九・池大雅山水画譜』が大きな役割を果たした。この冊子は韓天寿が縮模し画譜としていた稿本を、天寿没後木村蒹葭堂を介して中野素堂が刊行したものである。




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