391. ミツバチは花から花へと最短距離で飛び回り、粘菌はエサからエサへの最短コースを発見する 不思議

 2010年10月28日掲載  2014年 5月 5日再掲


生物の持つ本能には、まだわかっていない部分が多い。たとえば、渡り鳥が目的地に正確にたどり着けるのは星座の形を参照しながら飛ぶからとか、サケが生まれた川に戻ってくるのは、その川に特有な「におい」を覚えているからと言われている。

今回のニュースはミツバチの計算能力である。ミツバチは、花から花に飛び回るときには、時刻と太陽の位置を参照に方向を知り、迷うことなく巣箱に帰るといわれている。ここでは三角関数も交えた複雑な計算がなされている可能性??もあるが、まさかミツバチがそのようなことをしているわけがないだろうと考えるのが、ごく一般的な考え方である。

ところが、cnetJapanのニュースによると、ミツバチはさらに難しい巡回セールスマン問題を解いているというのである。これはオペレーションズリサーチの分野では有名なっ問題であるが、立ち寄る都市の数が多くなるに従い、問題は幾何級数的に難しくなる。アメリカの48都市を巡る話はこちらにある。

巡回セールスマン問題に近似解を与えるミツバチの知能はいったいどのくらいであろうか。本能的な行動とはいえ、結構高い数値が与えられるだろう。

一方、頭脳を持っていないはずの粘菌もこの問題をやってのけるようだ。この研究で日本の科学者が、毎年10の個人あるいは団体にしか与えられないイグノーベル賞を見事に受賞した。それだけの驚きをもって受け止められる新発見であったということだ。

この2つの事象は、私たちに本能とは何かを考えさせられる。そういえば、ヘベレケに酔ったヨッパライがどうして帰ったかわからないが、次の日に自分のベッドで目を覚ますという話もある。これも本能か? それとも学習か?




cnet Japan 10月26日

ハチの脳、コンピュータより優れている--英大学調査

ミツバチは、コンピュータでさえ解答を得るのが難しい複雑な数学的問題を解決する能力を備えていることが研究で明らかになった。The Guardianが英国時間10月24日に報じている。

 ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校の研究結果によると、ハチは、花から花へと飛ぶ際にその最短経路を見つけ出し、一般に「巡回セールスマン問題」と呼ばれる問題を効果的に解決する能力を持っているという。

 「巡回セールスマン問題」は、セールスマンがすべての目的地を訪問するという仮定において、その最短経路を見つけることが求められる。コンピュータでは、想定されるすべての経路の長さを比較し、最短経路を選ぶことで解答を得る。

 同校が実施した実験では、コンピュータ制御の人工花を使うことで、ハチが単純に花を見つけた順に飛ぶのか、最短経路を見つけようとするのかを調べた。その結果、ハチは、花の位置を調べ、時間とエネルギーを最も節約できる経路を飛ぶようなることが明らかになったという。




毎日.jp 10月13日

イグ・ノーベル賞:粘菌の“知恵”優れたネットワーク 広島大教授ら受賞 /広島
 
◇「同じ粘菌で2度目」 小林・広島大教授ら共同研究
 ユーモアのある科学研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の今年の「交通計画賞」に、中垣俊之・公立はこだて未来大教授(47)、小林亮・広島大教授(54)=応用数学=ら9人の「真性粘菌」を用いた共同研究が選ばれた。アメーバのような単細胞生物の粘菌が、実際の鉄道網よりも輸送効率やコストなどに優れたネットワークを作り上げることを示した。小林教授は「人間だけに知性があるというキリスト教圏の観念を覆す感じが受けたのでは」と話している。

 米科学誌サイエンスに今年1月、論文を発表した。研究は、関東地方を模した箱を使い、主要36都市に餌、東京駅に粘菌を置き、その動きを観察した。粘菌は時速1~2センチの速度で面状に広がり、1日ほどで、餌と餌を結ぶ鉄道網のようなネットワークを形成した。

 粘菌の動きをコンピューターでシミュレーションすると、▽輸送効率▽コスト▽耐故障性(1本の線が切れてもほかで代替できる)--を実際の鉄道網よりもバランス良く満たすパターンが見いだされたという。小林教授は「単細胞生物の粘菌は人間の100倍も長く生きており、ネットワーク作りにかけては大先輩」と語る。




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