400. 金星探査衛星「あかつき」で使用されたロケット燃料は ヒドラジン化合物-MOX系か

 2010年12月18日掲載  2014年 5月 5日再掲


前ブログで、「あかつき」の燃料は何かとの質問を受けたのですが、回答を書きましたところ、既定の800字には収まらなくなりましたので、新しくブログを起こしました。


次のURLに「セラミックスラスターはヒドラジンと四酸化二窒素を燃料に使う小型ロケットエンジン」と記されています。
http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20101209ddm003040101000c.html

詳しくはこちらです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Hypergolic_propellant

ヒドラジン(NH2NH2、融点1℃、沸点114℃)、メチルヒドラジン(CH3NHNH2、融点-52℃、沸点87℃)あるいは非対称ジメチルヒドラジン((CH3)2NNH2、UDMH、Unsymetrical dimethyl hydrazine、融点-57℃、沸点63℃)が燃料、N2O4と書いてありますが一般的にはMON(Mixed Oxides of NItrogen、N2O3とN2O4の混合物)が酸化剤です。N2O4では融点が-11℃(沸点は21℃)で宇宙空間で凍る心配もあります。

※非対称というのは、メチル基(CH3)が2こともが一方のチッソ(N)上にあることを表している。対称ジメチルヒドラジンならばCH3NHNHCH3(Symetrical Dimethylhydrazine)となります。

この3種のヒドラジン燃料のうちのどれが使用されたかはわかりません。NASAでよく使用されているのはUDMHだと思います。無置換ヒドラジンは融点が高く、高濃度になるとそれ自体で爆発性を有するので、本当に無置換ヒドラジンが使用されているのかには疑問を持っています。Wikipediaにはこれも使用されていると書いてありますが。宇宙空間の気温(気温というのも変ですが)は絶対零度に近いとも言われますので、融点は低いに越したことはないでしょう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%83%B3


この燃料と酸化剤の組み合わせの長所は、両者が触れた瞬間に自動的に燃焼を始めることです。着火の失敗の心配がないということです。燃焼室内での酸化剤と還元剤濃度が高くなってから着火するようでは、爆発的な反応が起こり、燃焼室を壊してしまう恐れもあります。この異常燃焼を回避する燃料と酸化剤の組み合わせでもあります。

なお、MON(Mixed Oxides of Nitrogen)は戦略物質で、日本でも輸出禁止となっています。




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