令和3年度 技術士一次試験 基礎科目
ポイント解説
1群 設計・計画に関するもの
R03年 基礎科目問題(日本技術士会)
Ⅰ-1-1 ユニバーサルデザイン
解答:④
「基礎科目問題を極める」 pp29~30(H20-1-1-1、H24-1-1-4、H26-1-1-1)を参照のこと
Ⅰ-1-2 システムの信頼度計算
解答:②
「基礎科目問題を極める」 pp7~8に計算方法の基本を示しています。簡単な計算ですので計算式はすぐに作れると思います。
ポイントとなるのは、計算の数が多いので、あせらず、間違いなく計算できるかが勝負となります。
計算にかかる時間を実際に計ってみると、試験会場での自信につながると思います。
Ⅰ-1-3 PDCAサイクル
解答:②
「基礎科目問題を極める」 p64に同じ問題H27-1-1-6があります。
基礎的な問題は繰り返し出題されるものですが、この問題は簡単すぎるのか、出題頻度は高くありません。
PDCAは基本中の基本ですので、本問は超ボーナス問題です。
Ⅰ-1-4 平均故障間隔
解答:③
「基礎科目問題を極める」 p18参照です。生産技術の基礎ですので知っていて当然とのことでしょう。
これもボーナス問題です。
Ⅰ-1-5 座屈に関する理解ル
解答:⑤
「基礎問題を極める」pp68~69参照です。オイラーの座屈荷重は難しいかもしれません。
この荷重にはどのような要素(パラメータ)が関わっているのかの質問がされています。
過去に出題された問題は座屈とはどのような現象かが問われるものでしたが、本年の問題はこれを一歩進めたものとなっています。
Ⅰ-1-6 製図法におけるルール
解答:③
「基礎科目問題を極める」pp390~392です。製図は技術者にとって重要ですので、これからも出題される可能性は大です。
本出題にはR02-1-1-5が参考となります。
2群 情報・論理に関するもの
R03年 基礎科目問題(日本技術士会)
Ⅰ-2-1 情報セキュリティー
解答:①
「基礎科目問題を極める」p108参照です。この問題はH27-1-2-5と同じです。
過去問の学習は大切です。
Ⅰ-2-2 論理式の計算
解答:②
「基礎科目問題を極める」 p115に計算方法を記しています。
簡単な計算ですぐに答えにたどり着くことができます。
一度解き方を覚えてしまうと間違うことはないと思います。
ボーナス問題です。
Ⅰ-2-3 データ送信必要時間
解答:②
1バイトが8ビットであることさえ知っていれば簡単に答えにたどり着けます。
0と1で織り成す2の8乗は256です。
Ⅰ-2-4 うるう年の判定俵現
解答:②
「基礎問題を極める」 pp134~135に、同じ出題H29-1-2-4があります。
一度確認しておくと、次に見たときには簡単に解ける問題です。
Ⅰ-2-5 逆ポーランド表記法
解答:①
はじめてこの問題を見ると戸惑いが生じると思います。
「基礎科目問題を極める」 pp130~131に解説をしています。
本問題はH30-1-2-5と同じ問題です。
日本語と英語、ポーランドですからポーランド語(ポリッシュ)ですか?
A+B が AB+ と表現されます。
Ⅰ-2-6 計算量と漸近的記法
解答:③
「基礎科目問題を極める」pp92~93も参照。実行時間のオーダーの問題で、 logn<n が示されています。
新傾向の出題です。わかってしまえばそうかということにはなるのですが、やはり難しい問題であると思います。
「基礎科目問題を極める」pp92~93に計算にかかる時間のオーダーに関する出題H22-1-2-2があります。
計算の要素が増えたら、たとえば要素が2倍になれば、必要な計算時間は2倍か?、4倍か?、それとも8倍か? という話です。
nが増えていったときの、関数の数値の増え方、すなわち爆発力(発散速度)は
logn < n < nlogn <n2 <n3 <2n
これを利用すればこの問題は簡単に解けるのですが、今回の試験では、この問題が一番の難物であったと思います。試験会場ではパッと見て、すぐに避けて通るべき問題であったでしょう。そのための選球眼(選問題眼)を養うために、過去問の勉強の方は避けては通れません。
私は昔、もう30年近く以上も昔となりますが、量子化学計算を行っていた時に、化学分子の大きさが2倍になると計算時間が8倍強に。4倍(ベンゼン環で4個程度の化合物)ともなると一晩以上かかっても計算が終わらない時代でした。計算時間が2の3乗倍ですのでオーダーは3となります。今ではコンピュータ能力が強力となり、アルゴリズムの改良もなされたのか、計算時間には大きな改善がみられています。
3群 解析に関するもの
R03年 基礎科目問題(日本技術士会)
Ⅰ-3-1 ベクトルの回転値
解答:④
「基礎科目問題を極める」 p198~201に同じです。
H20-1-3-5、H21-1-3-4、H22-1-3-2、H23-1-3-5、
H25-1-3-6、H26-1-3-1、H27-1-3-2、H30-1-3-2、
R01-1-3-1
ここに示したどれをとっても間違いなく得点源となる簡単な問題です。
大ボーナス問題。しかも毎回出題される確率が高い問題です。
無条件でワンポイントをゲットといった感じです。
Ⅰ-3-2 積分値と同じf(X)式は
解答:②
「基礎科目問題を極める」p153です。シンプソンの公式が理解できていれば簡単に解ける問題です。
シンプソンの公式を用いると積分が簡単な加減計算に変わりますので、高速計算が可能となります。
地表部付近からおおよそ海水面下10マイル(16km)までと推定する
シンプソンの公式はp202のR01再-1-3-4、p437のR02-1-3-2でも出てきます。
重要な公式ですので、(補足資料)微分・積分の基礎 中にも記載しています。
Ⅰ-3-3 有限要素法解析要素
解答:①
有限要素法に関連する問題は毎年必ず1問は出題されます。本問題は基本中の基本であるとは思うのですが、仕事で有限要素法を使う機会がなく、また、繰り返し学習をしていなかったら見落とす内容かもしれません。
「基礎科目問題を極める」 pp149、176~178、187に関連する情報を載せています。
有限要素法は広い範囲で使用されていますので、技術士一次試験・基礎科目にも何らかの形で必ず登場してきます。有限要素といいながら、試験勉強ではそれを構成する多くの要素を勉強しなければなりませんので、まさにブラックユーモアです。
Ⅰ-3-4 熱膨張した棒の応力
解答:③
これはヤング率に関する基本式を用いる、超ボーナス問題です。
「基礎科目問題を極める」 pp156~159に関連する多くの問題の解法を示しています。本問題はH16-1-3-2と同じ問題です。
Ⅰ-3-5 バネの固有振動数
解答:④
「基礎科目問題を極める」 pp171~174でバネの解説をしています。
無荷重のときのバネの長さにくらべ、重りがつりさげられて振動して最下点に来た時に、どれだけの伸びがあるかがわかれば、答にたどり着きます。少し論理を働かせる問題です。
Ⅰ-3-6 四分円の重心を求める
解答:⑤
この種類の出題は初めてとなります。
積分式を組み立てる力、その積分を解く力が試される問題です。
技術士一次試験・基礎科目問題の解答時間は1時間、この間に15問の解答をしなければならないとすると、1問あたりの解答に当てられる時間は平均4分となります。
この時間内で積分式を立て、それを解くということはほぼ不可能なようにも思えます。
答を知っていることがこの設問に解答できる大前提条件なのでしょうか?
円の重心の話であるから、重心位置に「π」が含まれているはずとの直観が働けば確率は50%にまで上がってくるのですが(5択を2択にまで絞り込める)。
「基礎科目問題を極める」ではこの問題を簡単に短時間で解こうと試みました。5択の内の3択は短時間で消すことができたのですが、2択が残ってしまいました。一方にはπが含まれ、もう一方にはπは含まれていませんでした。
4群 材料・化学・バイオに関するもの
R03年 基礎科目問題(日本技術士会)
Ⅰ-4-1 同位体の定義と性質
解答:③
「基礎科目問題を極める」 pp225~226で解説しています。ボーナス問題です。
一度わかってしまうと忘れること、間違うことはありません。
Ⅰ-4-2 酸化還元反応
正解:④
「基礎科目問題を極める」pp245~246で解説しています。
酸化数とうい概念がわかっていれば簡単に解答できます。
NaOH+HCl→NaCl+H2Oは酸化還元反応でしょうか? ということです。
ボーナス問題です。
Ⅰ-4-3 金属とひずみ、応力
正解:②
「基礎科目問題を極める」 pp262~263です。H26-1-4-3と同じ問題です。
どの金属が柔らかくてどの金属が固いか、また金属の温度が高くなるとその金属の固さはどうなるか、がわかっていれば簡単に答えられる問題です。
温度に関しては、極論すれば金属の融点に近づけば限りなく柔らかくなります。
Ⅰ-4-4 鉄の精錬
解答:①
「基礎科目問題を極める」 p267にクラーク数を記しています。クラーク数は地表部付近からおおよそ海水面下10マイル(16km)までの元素の存在比率を推定したものです。
溶鉱炉(高炉)での鉄の生産に関する情報は、広く知られているところです。高等学校の化学の教科書にその化学式がスラグの形成までも含めて掲載されています。本問題は高校化学よりも簡単で、酸化-還元を理解していると解ける問題です。
地球温暖化の時代、溶鉱炉からのCO2の排出量が出題されなかったのは不思議です。
2Fe2O3+3C→4Fe+3CO2 鉄Feの参加数は+3→0と参加数の減少ですので還元反応です。
Ⅰ-4-5 アミノ酸の特徴
解答:①
「基礎科目問題を極める」 pp283、285、287~288に関連する情報を掲載しています。
過去問と違っているのは、システインとメチオニンが出題されたことです。一般的にはなじみの少ないアミノ酸でしょう。
システイン(R-SH)が酸化されてジスルフィドジスルフィド(R-S-S-R)となった化合物の名前はシスチンです。
自信があれば取り組み、自信がなければ即却下する問題でしょう。
Ⅰ-4-6 DNAの突然変異
解答:②
「基礎科目問題を極める」 pp287~288にコドンに関する情報を記しています。DNAはG、C、A、Tの4つの塩基よりなる長い鎖ですが、その一方から他方に向けて並ぶ、3個ごとの塩基の並びがアミノ酸を決定し、そのアミノ酸が順次結合してタンパク質を形作っていきます。
この3個ごとというところがポイントです。DNA(遺伝子)に新たな1塩基が挿入されると、その挿入位置から後ろでは、DNA3個ごとの読出しに狂いが生じます。
A-A-A-C-C-C-A-A-A → A-A-A C-C-C A-A-A
A-A-T-A-C-C-C-A-A-A → A-A-T A-C-C C-A-A
5群 環境・エネルギー・技術に関するもの
R03年 基礎科目問題(日本技術士会)
Ⅰ-5-1 用語説明の正誤
解答:②
用語の内容を問うものです。基本的には常日頃から新聞等で情報にふれ、その内容を理解しておく必要があります。
最近は特に気候変動、その中でも地球温暖化、脱炭素は避けては通れないテーマとなっています。
「基礎科目問題を極める」にも、(補足資料)中に地球温暖化とカーボンニュートラルの項を設け、エネルギー白書と環境白書より必要と思える基礎データを抜粋しています。
Ⅰ-5-2 環境保全対策技術
解答:⑤
③誤り
「基礎科目問題を極める」 pp338~339で解説しています。本問題はH25-1-5-4と同じです。
Ⅰ-5-3 日本のエネルギー情勢
解答:①
再生可能エネルギーによる発電比率が約10%であることを知っていれば、半分は正解です。
風力発電で利用する風のエネルギーは、風速の?乗に比例する。この?はたまに新聞紙上でも見かけますが、意識していないと時間と共に忘れ去ります。答は?=3です。
日本は陸地では一定風速の強い風が得にくいので、最近は国は洋上風力に力を入れています。
Ⅰ-5-4 一次エネルギー消費
解答:②
ページ314 H27-1-5-4に同じ問題があります。
国別の国民一人当たりの一次エネルギー使用量を問う問題です。
ただし、その問題では2011年の各国の一人当たりのエネルギー消費量と聞かれているのに対し、本問題では2018年の各国の一人当たりのエネルギー供給量と聞かれています。質問されている文言に若干の違いはありますが、問われている内容は同じです。また、選択肢に用意されている答の組み合わせも同じです。
ただし、年度が異なりますので社会情勢により各国の一次エネルギー使用量に変化が生じている可能性もあり、全く同じ問題とは言えないところが残念です(実際にはH27年度試験とは対象となっている年度は離れていますが、一次エネルギーの使用量に大きな変化はないようです)。
試験勉強としては、最新の情報を確認しておくことが大切になります。
このエネルギーの消費量も新聞紙上で図として見かけることがあります。アメリカやカナダの一次エネルギー使用量の多いことはよく知られていますが、お隣の韓国が日本よりも多くの一次エネルギーを使用していることはあまり知られていないかもしれません。
Ⅰ-5-5 科学技術の年代史
解答:④
技術史。これは誰が、いつ、何をしたかを問うものです。覚えるしかないかも。
「基礎科目問題を極める」pp364~366にそのまとめをしています。
本問題はH30-1-5-5で出題されたものと同じです。
技術の発展過程には順番がある。
たとえば、哲学・数学→天文学→機械工学→電気→化学→核物理やバイオ
第4群はバイオです。生物でなくてよかったと思っています。
生物は多くの暗記が要求されますが、バイオは理詰めで処理できる部分が多くあります。
Ⅰ-5-6 科学技術基本計画
解答:④
本問は難問です。
出題者としては常識かもしれませんが、Webで調べてもこの順番を決定するのは一苦労です(不可能に近いと考えられます)。
解答すべき6問中の3問から、この問題を外す「選択眼」が必要となります。
以上、令和3年度の「基礎科目」について、超駆け足で要点のみを述べてきましたが、
詳しくは拙書「技術士一次試験 基礎科目を極める 2022年版」を参照ください。
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