D02  化学反応



この問題の努力目標

  理解する




技術士試験の問題からは必要最小限の引用にとどめる。(問題)が記されている部分はその引用である。

問題および解答は日本技術士会のホームページより必要に応じて入手してください。

  技術士第一次試験の問題     



問題番号が赤字のものは、ボーナス問題

H28年 Ⅰ-4-1   H27年 Ⅰ-4-1   H26年 Ⅰ-4-1

H25年 Ⅰ-4-1   H24年 Ⅰ-4-1   
H24年 Ⅰ-4-2

H23年 Ⅰ-4-2   
H22年 Ⅰ-4-2   H21年 Ⅰ-4-2

H20年 Ⅰ-4-1   H20年 Ⅰ-4-2   H19年 Ⅰ-4-2

H18年 Ⅰ-4-2

同じ問題

H28年 Ⅰ-4-1 と H25年 Ⅰ-4-1 と H18年 Ⅰ-4-2

H27年 Ⅰ-4-1 と H20年 Ⅰ-4-2

H26年 Ⅰ-4-1 と H23年 Ⅰ-4-2


H24年 Ⅰ-4-1 と H21年 Ⅰ-4-2



H28年 Ⅰ-4-1

正答: ④ 

(解答)

ルシャトリエの法則である。

 N + 3H → 2NH + 発熱

この反応に当てはめると、
 体積が減る反応は圧力を上げると反応は進みやすくなる。
 発熱を伴う反応では、反応温度を低くすると反応は進みやすくなる。

ルシャトリエの原理(Wikipedia)ではアンモニアを例に、議論が展開されている。



H27年 Ⅰ-4-1 

正答: ④ 

(解答)

それぞれの化合物を燃焼させた時の化学式を書く。この問題では、使用する酸素や生成する水に係数をつける必要はないが、ここでは正確を期した。

① CH + 2O     → CO + 2H
② CHOH + 1.5O → CO + 2H
③ C + 3.5O  → 2CO + 3H
④ C + 3O    → 2CO + 2H
⑤ COH + 3O  → 2CO + 3H

④のエチレンが1モル28gからCOを2モル生成する。従って、同じ質量の化合物を燃焼させた時には、最も多くのCOを生成する。

解き方のポイント

与えられた化合物には炭素を1個もったものと2個もったものがある。炭素1個の化合物、あるいは、炭素2個の化合物の中ではそれぞれ分子量の一番小さな化合物が、単位重量当たりより多くのCOを発生させる。従って、①のメタンか④のエチレンのどちらかが答えである。

①のメタンは炭素が1個であるから燃焼により発生してくるCOも1個、従ってメタン1gあたりCOは1/16モル発生する。同様に④のエチレン1gあたりからはCOは2/28モル、すなわち1/14モル発生する。従って、答えは④のエチレンである。

結論としては、わざわざ化学式を書くまでもない。次の表さえ作ればよいことが分かった。

番号 化合物名 化学式 分子量 炭素の個数/分子量 重量当たりCO
発生量の多い順番
メタン CH 16 1/16=0.0625
メタノール CHOH 32 1/32=0.0313
エタン 30 2/30=0.0667
エチレン 28 2/28=0.0714
エタノール OH 46 2/46=0.0435
※ 分子量はC=12、H=1、O=16として求めている。



H26年 Ⅰ-4-1

正答: ①

(解答)

原子同士が結合するときに結合エネルギーが生まれると考えている。逆に分子を原子に分解するときには結合エネルギーに相当するエネルギーが必要である。

  H-H     → 2H - 436kJ
  Cl-Cl    → 2Cl - 243kJ
  2H + 2Cl → 2HCl + 2×432kJ
合計すると
  H-H + Cl-Cl → 2HCl + 185kJ

ここから説明が少し難しくなるが、生成熱は元素の生成熱をゼロとして求める。従って、H-HおよびCl-Clの生成熱はゼロ。そのH-HとCl-Clが反応して1モルのHClが生じるときに93kJの発熱があった。(HCl+93kJ)の合計は反応前と同じエネルギーでゼロであるので、HClも持っているエネルギーは-93kJということになる。マイナス符号が付いているのは反応により安定になったということである。エネルギーを放出しながら低いエネルギー位置に移り、安定化したということである。



H24年 Ⅰ-4-1

正答: ① 

(解答)

化学反応式を書き直す。

  C+0.5O-CO  =111kJ     式1
  C+O-CO    =394kJ     式2
  H+0.5O-HO=286kJ     式3

そして①も書き直す。

  CO+H-C-HO=?kJ       式①

②~⑤も同様に書き直して、マトリックスを作る。

CO CO 熱量
式1 0.5 -1 111
式2 -1 394
式3 0.5 -1 286
式① -1 -1 ?①
式② -1 -1 ?②
式③ -0.5 -1 ?③
式④ -2 ?④
式⑤ -2 -1 ?⑤

このマトリックスからわかることは

  ?①=式3-式1      =286-111       =+175kJ
  ?②=-式1+式2-式3 =-111+394-286 =-3kJ
  ?③=式1-式2      =111-394       =-283kJ
  ?④=2×式1-式2    =2×111-394    =-172kJ
  ?⑤=式2-2×式3    =394-2×286    =-178kJ


※ もっと簡単な解法があります。4分以内で答えに至ります。



H24年 Ⅰ-4-2 

正答: ③ 

(解答)

Al3+イオンはAlが両性金属なので、過剰量の水酸化ナトリウムに溶解します。
両性金属は酸にもアルカリにも溶ける金属という意味で、下の表にあるAl、Zn、Sn、Pbの4種類の金属です。


(参考)

過剰の「水酸化ナトリウム水溶液」を加えたときです。
過剰のNaOHaqで溶解する金属 → Al3+, Zn2+, Sn2+, Pb2+, (Cr3+)
イオン
少量
過剰
少量での反応
過剰での反応
Al3+

Al(OH)3

[Al(OH)4]-
Al3++3OH-→Al(OH)3 Al(OH)3+OH-→[Al(OH)4]-

Zn2+

Zn(OH)2
[Zn(OH)4]2-
Zn2++2OH-→Zn(OH)2 Zn(OH)2+2OH-→[Zn(OH)4]2-
Sn2+
Sn(OH)2
[Sn(OH)4]2-
Sn2++2OH-→Sn(OH)2 Sn(OH)2+2OH-→[Sn(OH)4]2-
Pb2+
Pb(OH)2
[Pb(OH)4]2-
Pb2++2OH-→Pb(OH)2 Pb(OH)2+2OH-→[Pb(OH)4]2-
出典:InorganicChemistry@Chembase


H22年 Ⅰ-4-2 

正答: ① 

(解答)

ベンゼンに紫外線を当てながら塩素を反応させると、ベンゼンに3分子の塩素が付加して、ヘキサクロロシクロヘキサン(ベンゼンヘキサクロリド、BHC)ができる。

フェノールの酸性は、2,,6-トリニトロフェノールよりも弱い。
ニトロ基は強力な電子吸引器であり、ベンゼン環の電子密度を小さくすること、また、ニトロ基の電子共役によりフェノールの酸素原子上の電子密度が小さくなることにより、2,,6-トリニトロフェノール(pKa 0.38、別名、ピクリン酸)の酸性は強くなる。フェノールはpKa 9.95。

「ベンゼン環は置換反応より付加反応が起こりやすい。」は誤り。
付加反応より置換反応が起こりやすい。ベンゼン環のニトロ化などは置換反応の典型である。

「ジクロロベンゼンの構造異性体は5つある。」は誤り。
オルト、メタ、パラの3種類。

「トルエンに濃硝酸と濃硫酸を加えてニトロ化すると、3種類のモノニトロ化合物が生成するが90%以上はメタ位に結合したニトロトルエンが生成する。」は誤り。
トルエンに付いている置換基であるメチル基はオルト、パラ配向性であるので、m-ニトロトルエンは生じても少量である。




H20年 Ⅰー4-1 

正答: ②

(解答)

 2NHCl+Ca(OH) → CaCl+2HO+2NH↑ 加熱によりNH3が溶液より出てくる
 HCOOH+濃硫酸(HSO) → HSOaq+CO↑ 硫酸は脱水剤 加熱により反応は進行
 FeS+希硫酸(HSO) → FeSO+HS↑
 Cu+熱濃硫酸(2HSO) → CuSO+2HO+SO
 CaCO+濃塩酸(2HCl) → CaCl+CO

この中で水に溶解し難いガスは一酸化炭素(CO)です。


(参考)

高校で習う気体の性質

気体 臭い 空気と比べた重さ 水溶性 捕集法
H2 無色 なし 軽い 溶けない 水上置換
O2 無色 なし ほぼ同じ 溶けない 水上置換
O3 淡青色 特異臭 重い あまり溶けない 無声放電
N2 無色 なし ほぼ同じ 溶けない 水上置換
CO 無色 なし ほぼ同じ 溶けない 水上置換
CO2 無色 なし 重い あまり溶けない(弱酸性) 下方・水上置換
Cl2 黄緑色 刺激臭 重い 溶ける(酸性) 下方置換
HCl 無色 刺激臭 重い よく溶ける(強酸性) 下方置換
H2S 無色 腐乱臭 重い 溶ける(弱酸性) 下方置換
SO2 無色 刺激臭 重い よく溶ける(酸性) 下方置換
NO 無色 なし ほぼ同じ 溶けない 水上置換
NO2 赤褐色 刺激臭 重い よく溶ける(強酸性) 下方置換
HF 無色 刺激臭 軽い よく溶ける(弱酸性) 下方置換
NH3 無色 刺激臭 軽い よく溶ける(弱塩基性) 上方置換



H19年 Ⅰ-4-2 

正答: ⑤

(解答)

鉛蓄電池は希硫酸に鉛の電極と二酸化鉛の電極を浸した電池であり、起電力は約Vである。

放電にともない負極において(a)の反応が、正極において(b)の反応が生じる。


  Pb+SO2-           → PbSO+2e    (a
  PbO+4H+SO2-+2e → PbSO+2HO   (b) 

放電反応ではが酸化され、酸化鉛が還元される。

また、放電により硫酸が硫酸鉛になるとともに、希硫酸の密度は小さくなる。


私たちの認識では、電流は電池のプラス極(正極)からマイナス極(負極)に流れます。これは、私たちがプラスの電荷をもった粒が電池より流れ出ていると考えているためです。ところが電流の元である電子はマイナスの電荷をもっていますので、負極から電子が流れ出て正極に至ると考える必要があります。従って、電子を出す極が負極、電子を受け取る極が正極ということになります。

負極の式(a)でPbの酸化数は反応により、0→+2となっています。酸化数と名がついているぐらいですから、この数値が増加すれば酸化です。従って鉛は酸化されます。同様に、正極の式(b)では、Pbの酸化数は+4→+2と減少します。従って、PbOは還元されます。

濃硫酸の密度は1.84。この硫酸成分が反応で消費されていきますので、希硫酸の密度は放電に伴い小さくなっていきます。


鉛蓄電池(Wikipedia)には、硫酸濃度は「電解液: 希硫酸(HSO)濃度:30-35%程度を用途別にJISで規定」とあります。




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