D08  高分子化合物の性質



この問題の努力目標

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技術士試験の問題からは必要最小限の引用にとどめる。(問題)が記されている部分はその引用である。

問題および解答は日本技術士会のホームページより必要に応じて入手してください。

  技術士第一次試験の問題      



問題番号が赤字のものは、ボーナス問題

H18年 Ⅰ-4-4




H18年 Ⅰ-4-4

正答: ⑤

(解答)

「生ゴムは,ゴムノキの樹液からとれる乳液(ラテックス)に分散する高分子化合物を凝集させた柔らかい固体である。生ゴムを加硫すると安定で弾性の大きいゴムになるが,加硫する硫黄の量を減らすと,より硬いゴムになる。」は誤り。
硫黄の量を増やすとより硬いゴムとなる。究極はエボナイトであり、生ゴムを長時間加硫して硬化させたものである。含硫率は、30~40%に及ぶ。

「合成ゴムは,イソプレンやイソプレンに似た構造のジエンから,天然ゴムに似た性質の物質を縮合重合してつくられている。ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であるNBRは,他のゴムよりも耐油性に優れている。」は誤り。
縮合重合ではなく、付加重合です。

「セルロースなどの天然高分子を化学的に処理して溶液状態にしてから,再び繊維状にしたものを再生繊維という。再生繊維にはビスコースレーヨンなどがあり,分子式はセルロースと同じでも,分子量(重合度)はセルロースより大きい。」は誤り。
セルロースより小さい。レーヨンは成分が綿や麻と同じとはいえ、重合度が300程度しかなく、対する綿は2000から3000、麻は10000近くあり、レーヨンの方が分子量が小さいという特徴があります。特徴や作り方を(参考)にピックアップしました。

「6-ナイロン(ナイロン6)は,ε-カプロラククムの開環重合で得られる合成繊維である。縮合重合によって得られる6,6-ナイロン(ナイロン6,6)と反応は異なるが,いずれも熱可塑性のポリエステルである。)は誤り。
ポリエステルではなくポリアミドです。エステルはRCOOR’の構造ですが、アミドはRCONHR’の構造となります。(参考)をご覧ください。

フェノール樹脂には,フェノールとホルムアルデヒドを原料に,酸触媒の存在下で縮合重合させて得られるノボラックとよばれる熱可塑性樹脂を硬化剤とともに加熱して合成される熱硬化性樹脂があり,絶縁材や接着剤として用いられる。


(参考) 覚えきれませんので、参考まで。

重合反応(Wikipedia)

縮合重合 縮合重合(しゅくごうじゅうごう)とは、複数の化合物(特に有機化合物)が、互いの分子内から (H2O) などの小分子を取り外しながら結合(縮合)し、それらが連鎖的につながって高分子が生成(重合)すること。
例えば、ポリアミド樹脂ナイロン)、ポリエステル樹脂 (PET)、デンプンフェノール樹脂尿素樹脂メラミン樹脂ポリカーボネート樹脂などが縮合重合による生成物である。
開環重合 開環重合(かいかんじゅうごう)は環状化合物の環構造を解き、環の解かれた化合物の端同士が結合することで重合体とする反応である。合成繊維6-ナイロンナイロン-12ラクタムの開環重合により製造される。
付加重合 重合反応(じゅうごうはんのう)とは重合体(ポリマー)を合成することを目的にした一群の化学反応の呼称である。また重合反応はその元となる反応の反応機構や化学反応種により細分化され、区分された反応名に重または重合の語を加えることで重合体合成反応であることを表す。
配位重合 たとえばポリプロピレン。 プロピレン単独の重合体であるポリプロピレン (PP) は、ラジカル重合やイオン重合では生成せず、チーグラー・ナッタ触媒などを用いてプロピレンを配位重合させることで得られる。
ラジカル重合 ラジカル重合(ラジカルじゅうごう、radical polymerization)は高分子化学における重合反応の形式の一種であり、ラジカル反応中心としてポリマー鎖が伸張していく反応である。
イオン重合 イオン重合(—じゅうごう)とは、付加重合のうち活性種がアニオンもしくはカチオンである重合のことで、それぞれアニオン重合およびカチオン重合と呼ばれる。特徴としては、一般にラジカル重合は未反応モノマーの減少に伴い連鎖反応が減少するとともにポリマーラジカル同士や副反応のラジカル反応で終端反応が増加しラジカル種が減少・消滅する。そしてラジカル重合は水系などプロトン溶媒中でも進行するが、一方イオン重合ではイオン種が消滅しないようにする為に非プロトン溶媒が使用され、あるいは低密度ポリエチレンのように気相で反応させる必要がある。
カチオン重合 カチオン重合(—じゅうごう)とは、イオン重合のうち、活性種がカチオンである重合のこと。一般的に用いられる開始剤としては、一般のブレンステッドの他に三塩化アルミニウムに代表されるルイス酸なども用いられる。また、用いるモノマーとしては電子供与性基を持つアルケンの方が活性種であるカチオンを安定化するために重合活性が高い。
アニオン重合 アニオン重合(—じゅうごう)とは、イオン重合のうち、活性種がアニオンである重合のこと。用いられる開始剤としてはアルキルリチウム化合物がよく用いられる。また、用いるモノマーとしては電子求引性基を持つアルケンの方が活性種であるアニオンを安定化するために重合活性が高い。


レーヨン

レーヨン繊維の特徴より抜粋

レーヨンは化学繊維のうち、再生セルロール繊維に分類され、その製法(ビスコース法)からビスコース繊維とも呼ばれます。以前は人絹(じんけん、人造絹糸の略)やスフ(ステープル・ファイバー)とも称呼されていましたが、絹を人工的に模倣しようとしたことがこの繊維開発の背景にあることから、こうした呼び名も使われていたようです。

化学繊維の黎明期から今も使われている代表的な繊維のひとつといえます、。独特のドレープ性を持つため、ファッション性が要求される衣服、衣料とは相性が良い素材です。

レーヨンは成分が綿や麻と同じとはいえ、重合度が300程度しかなく、対する綿は2000から3000、麻は10000近くあり、分子量が小さいという特徴があります。この違いから、綿や麻とはかなり異なる性質を持つ繊維となっています。


ビスコースレーヨンについて(放課後化学講義室)

ビスコースレーヨン(ビスコース法レーヨン)とは、

  • セルロースを水酸化ナトリウム水溶液と二硫化炭素で処理してビスコースと呼ばれるコロイド溶液を作る。
  • ビスコースを細孔から希硫酸に噴出すると繊維状にセルロースが再生。
    という過程(ビスコース法)でセルロースを再生させた再生繊維(人絹、レーヨン)である。

さらに詳細な説明が続きます。


ナイロン(Wikipedia)

ナイロンNylon)は、ポリアミド合成樹脂の種類である。世界初の合成繊維のナイロン6,66,6-ナイロンなどとも)が含まれる。1935年アメリカデュポン社のウォーレス・カロザースが合成に成功した。

ナイロン(nylon)の名称は、「伝線(run)しないパンティストッキング用の繊維」を意図した「norun」に由来する[1]

ナイロン6:{CO-(CH2)5-NH}n
 ナイロン6ε-カプロラクタムを開環重縮合したポリアミドで略号はPA6である。融点225℃、ガラス遷移点48℃、比重1.14である。

ナイロン6,6:{CO-(CH2)4-CO-NH-(CH2)6-NH}n
 ナイロン66は、米デュポン社のウォーレス・カロザースが発明した完全人工合成による合成繊維であり、天然繊維の化学変換により可溶化し繊維として再生した、それまでの合成繊維とは一線を画する。略称はPA66、融点265℃、ガラス遷移点50℃、比重1.14である。

ナイロン6の製法(開環重合、Wikipedia)より




フェノール樹脂(Wikipedia)

フェノール樹脂(フェノールじゅし、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂ベークライト石炭酸樹脂)は、フェノールホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂の一つで、世界で初めて植物以外の原料より、人工的に合成されたプラスチックである。硬化させた樹脂は、3次元的な網目構造を持つ。

ベルギー生まれのアメリカ人化学者、レオ・ヘンドリック・ベークランド1907年にベークライト (Bakelite) を発明、フェノール(石炭酸)とホルマリンによって作り出された。




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