D15  生体膜



この問題の努力目標

  考えて理解する




技術士試験の問題からは必要最小限の引用にとどめる。(問題)が記されている部分はその引用である。

問題および解答は日本技術士会のホームページより必要に応じて入手してください。

  技術士第一次試験の問題      



問題番号が赤字のものは、ボーナス問題

H26年 Ⅰ-4-5   H23年 Ⅰ-4-5

同じ問題

H26年 Ⅰ-4-5 と H23年 Ⅰ-4-5




H26年 Ⅰ-4-5 

正答: ③ 

(解答)

ポイントは、脂肪酸の鎖が長い方が安定。飽和脂肪酸の方が不飽和脂肪酸より安定。
       長鎖炭化水素の飽和鎖同士がファンデルワールス力により相互作用しやすいと考えると理解できます。

最後の文章「細菌の培養温度を上昇させた場合、生体膜の流動性を保つため、膜脂質の成分として飽和脂肪酸が増加する場合がある。」は、「流動性を保つ」の解釈が難しいですね。不飽和脂肪酸の量がそのままであると、温度の上昇により流動性が高くなり過ぎるので、飽和脂肪酸を増やして流動性の最適化を図ると理解するのでしょう。

生体膜の構成要素の1 つは脂質である。長い炭化水素鎖を持つカルボン酸である脂肪酸は、脂質の主成分であり、エステル体の形で脂質中に存在している。

生体膜に用いられる炭素数
12以上の飽和脂肪酸の場合、炭素鎖が長い方が、融点が高い。細菌の培養温度を20℃から30℃に上昇させると、細菌は環境に応答して、膜脂質を合成する成分として長鎖脂肪酸の割合が増える場合がある。

同じ炭素数でも炭素鎖中に不飽和結合が存在する脂肪酸は、飽和結合のみの脂肪酸と比べて融点が
低い

不飽和結合を有する脂質を含む生体膜は、飽和結合のみの脂質で構成された生体膜よりも流動性が増す。

そこで、細菌の培養温度を上昇させた場合、生体膜の流動性を保つため、膜脂質の成分として飽和脂肪酸が増加する場合がある。



(参考)

細胞膜(Wikipedia)

脂質二重層

細胞膜は通常脂質二重層と呼ばれる構造をつくっている。細胞膜を構成する主要な成分であるリン脂質には頭部と尾部があるが、頭部はコリンリン酸からなり、親水性である。一方、尾部は炭化水素からなり、疎水性である。そのため極性を持つ体液中では尾部を内側に、頭部を外側にするようにリン脂質が二重の膜を形成する。これを脂質二重層と呼ぶ。

流動性

細胞膜は流動性を持ち、脂質や膜タンパクは動いている。この流動性は膜の構成物質で決まる。たとえば、リン脂質を構成する炭化水素の長さと不飽和度(二重結合の数)に影響され、炭化水素が短いほど、また二重結合を持つ炭化水素が多いほど(二重結合があるとその部分で炭化水素が折れ曲がるので)リン脂質の相互作用が低くなり流動性は増す。また細胞膜の脂質分子間に存在するコレステロールが多いほど流動性は低くなる[1]。ただし、すべての膜タンパクが無限の流動性を持つわけではなく、むしろ多くの膜タンパクは細胞骨格タンパクや他のタンパクと強く結びつき、細胞膜上の一定の場所に局在している。
(※ 二重結合はシス体であるので、折れ曲がるとの表現となっている。トランス体であれば、ほぼ直線的に伸びることができる。)




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