E11  地球温暖化



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技術士試験の問題からは必要最小限の引用にとどめる。(問題)が記されている部分はその引用である。

問題および解答は日本技術士会のホームページより必要に応じて入手してください。

  技術士第一次試験の問題     



問題番号が赤字のものは、ボーナス問題

H27年 Ⅰ-5-2
   H23年 Ⅰ-5-1   H22年 Ⅰ-5-1

H21年 Ⅰ-5-3   H18年 Ⅰ-5-1   H17年 Ⅰ-5-3

同じ問題

H27年 Ⅰ-5-2 と H18年 Ⅰ-5-1


H27年 Ⅰ-5-2

正答: ①

(解答)

「地球温暖化を防止することが人類共通の課題であることに鑑み、温室効果ガスの排出抑制を促進するための措置を講ずることなどを定めたものであり、森林などによる吸収作用の保全には言及していない。」は誤り。
森林などによる吸収作用の保全には言及している。

温室効果ガスとして、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定められるもの、パーフルオロカーボンのうち政令で定められるもの、六ふっ化硫黄、三ふっ化窒素を対象としている。

事業活動に伴う温室効果ガス排出量が相当程度多い特定排出者のうち、政令で定める規模以上の事業所を有する場合には、その事業所ごとに、温室効果ガス算定排出量に関し定められる事項を事業所管大臣に報告しなければならない。

国民が行う温暖化防止のための行動を効果的に進めるため、都道府県知事は、地球温暖化防止活動推進員の委嘱や地域地球温暖化防止活動推進センターの指定を行うことができる。

地球温暖化対策計画は、温室効果ガスの排出量などの事情を勘案して、少なくとも年ごとにその目標及び施策について検討し、必要と認めるときは速やかに変更しなければならない。



(参考)

地球温暖化対策の推進に関する法律(Wikipedia)

地球温暖化対策の推進に関する法律1998109法律第117号)は、国内における地球温暖化対策を推進するための枠組みを定めた法律である。温暖化対策推進法温対法とも呼ばれている。

目的

地球温暖化が地球全体の環境に深刻な影響を及ぼすものであり、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させ地球温暖化を防止することが人類共通の課題であり、全ての者が自主的かつ積極的にこの課題に取り組むことが重要であることに鑑み、地球温暖化対策に関し、地球温暖化対策計画を策定するとともに、社会経済活動その他の活動による温室効果ガスの排出の抑制等を促進するための措置を講ずること等により、地球温暖化対策の推進を図り、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。(第1条)

沿革

  • 平成10年成立 京都議定書の採択を受け、国内対策の枠組みを定めた。
  • 平成14年改正 京都議定書目標達成計画の策定、地球温暖化対策推進本部の法定化等を定めた。
  • 平成17年改正 温室効果ガス算定・報告・公表制度の創設等を定めた。
  • 平成18年改正 京都メカニズムに関する制度を定めた。
  • 平成20年改正 排出抑制等指針の策定、地方公共団体実行計画の策定事項の追加等を定めた。
  • 平成25年改正 京都議定書目標達成計画に代わる地球温暖化対策計画の策定や、三ふっ化窒素(NF3)の追加等を定めた。※ H18年 Ⅰ-5-1の同じ出題ではNFは含まれていなかった。
  • 平成28年改正 普及啓発と国際協力の強化、地方公共団体実行計画の共同策定等を定めた。



地球温暖化対策の推進に関する法律

第一章 総則

(定義)

第二条  この法律において「地球温暖化」とは、人の活動に伴って発生する温室効果ガスが大気中の温室効果ガスの濃度を増加させることにより、地球全体として、地表、大気及び海水の温度が追加的に上昇する現象をいう。

 この法律において「温室効果ガス」とは、次に掲げる物質をいう。

 二酸化炭素
 メタン
 一酸化二窒素
 ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
 パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
 六ふっ化硫黄
 三ふっ化窒素

第二章 地球温暖化対策計画

(地球温暖化対策計画の変更)

第九条  政府は、少なくとも三年ごとに、我が国における温室効果ガスの排出及び吸収の量の状況その他の事情を勘案して、地球温暖化対策計画に定められた目標及び施策について検討を加えるものとする。
 政府は、前項の規定による検討の結果に基づき、必要があると認めるときは、速やかに、地球温暖化対策計画を変更しなければならない。

第四章 温室効果ガスの排出の抑制等のための施策

(温室効果ガス算定排出量の報告)

第二十六条
 事業活動(国又は地方公共団体の事務及び事業を含む。以下この条において同じ。)に伴い相当程度多い温室効果ガスの排出をする者として政令で定めるもの(以下「特定排出者」という。)は、毎年度、主務省令で定めるところにより、主務省令で定める期間に排出した温室効果ガス算定排出量に関し、主務省令で定める事項(当該特定排出者が政令で定める規模以上の事業所を設置している場合にあっては、当該事項及び当該規模以上の事業所ごとに主務省令で定める期間に排出した温室効果ガス算定排出量に関し、主務省令で定める事項)を当該特定排出者に係る事業を所管する大臣(以下「事業所管大臣」という。)に報告しなければならない。

(地球温暖化防止活動推進員)


第三十七条  都道府県知事及び指定都市等の長(以下「都道府県知事等」という。)は、(地域地球温暖化防止活動推進センター) ・・・

(地域地球温暖化防止活動推進センター)

第三十八条  都道府県知事等は、地球温暖化対策に関する普及啓発を行うこと等により地球温暖化の防止に寄与する活動の促進を図ることを目的とする一般社団法人若しくは一般・・・

第五章 森林等による吸収作用の保全等

第四十二条  政府及び地方公共団体は、地球温暖化対策計画に定められた温室効果ガスの吸収の量に関する目標を達成するため、森林・林業基本法 (昭和三十九年法律第百六十一号)第十一条第一項 に規定する森林・林業基本計画その他の森林の整備及び保全又は緑地の保全及び緑化の推進に関する計画に基づき、温室効果ガスの吸収作用の保全及び強化を図るものとする。




H23年 Ⅰ-5-1 

正答: ① 

(解答)

わが国が2008年度に排出した温室効果ガスのうち、二酸化炭素の排出量は全体の9割以上を占めている。

「わが国の2008年度における二酸化炭素の排出量を部門別に比較すると、産業部門が最も多く、次いで家庭部門である。」は誤り。
エネルギー転換部門が1位で、家庭部門の順位はぐっと下です(下の問題H22年 Ⅰ-5-1の(参考)を参照)。

「気候変動に関する国際連合枠組条約では、2050年までに温室効果ガスの大気中濃度を自然の生態系や人類に危険な悪影響を及ぼさない水準で、安定化させることを目的に掲げている。」は誤り。
90年代末までに温室効果ガスの排出量を90年レベルに戻す(下の(参考)を参照)。

「1997年の気候変動枠組条約締約国会議において、先進各国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数量化された削減約束を定めたパリ議定書が採択された。」は誤り。
パリ議定書ではなく京都議定書です(下の問題H17年 Ⅰ-5-3の(参考)京都議定書を参照)。

「2009年の気候変動枠組条約締約国会議において、中国やインドなどの途上国に対しても、温室効果ガスの排出量の基準年から削減させる数値目標を定めた。」は誤り。
数値目標は定められていない(下の(参考)を参照)。



(参考)

気候変動枠組み条約(コトバンク)

地球温暖化防止の国際的な取り決めを定めた初の条約。通称地球温暖化防止条約。1990年の第2回世界気候会議で条約作りを始める勧告が出され、92年5月の国連総会で条約が採択。同年の地球サミットで155カ国が署名、94年3月発効した。2006年4月現在、189カ国・地域が締約。「気候に危険な人為的影響を及ぼすことにならない水準で、温室効果ガスの大気中の濃度を安定化させる」ことを条約の目標に掲げる。先進国の責務として、(1)90年代末までに温室効果ガスの排出量を90年レベルに戻す、(2)各国はガスの排出と吸収の目録を作り、温暖化対策の国別計画を策定する


第15回気候変動枠組条約締約国会議(Wikipedia)

2009年12月7日から12月18日の日程でデンマークコペンハーゲンベラセンターで開催された、京都議定書に続く、温室効果ガス排出規制に関する国際的枠組を決定することを主な目的とした国際会議である[1]

2013年以降の温室効果ガス削減目標

第3回気候変動枠組条約締約国会議で採決された京都議定書に定めのない2013年以降の温暖化ガス削減目標が最大の焦点となった[要出典]ラクイラ・サミットで「先進国は2050年までに温室効果ガス80%減」と合意している。しかし、先進国と途上国の対立は激しく、京都議定書に続く新たな議定書(アメリカと中国が参加するポスト京都議定書)の採択は困難とされた。




H22年 Ⅰ-5-1  

正答: ④

東日本大震災前の出題です。2016年の現在と食い違っている部分があるかも知れません。集められる最新の情報での解答を試みました。2007年を2014年に読み替えての解答です。

正答がなくなってしまいました。

(解答)

「2007年の家庭における世帯当たりの年間CO排出量を冷房、暖房、給湯、照明・家電・その他の用途に分けたとき、冷房用途からの排出量が最大である。」は誤り。
紹明・家電製品からの排出量が最大である((参考)の図表2)。

「2007年の家庭における世帯当たりの年間CO排出量を冷房、暖房、給湯、照明・家電・その他の用途に分けたとき、暖房用途からの排出量が最大である。」は誤り。
紹明・家電製品からの排出量が最大である((参考)の図表2。

「2007年における我が国の一人当たりのCO排出量は、フランスのそれより少ない。」は誤り。
フランスよりも日本の方が多い。(参考)の図表3にはフランスは現れない。フランスの電力は原子力発電で作られ、どの電力の一部をドイツに輸出している。

「2007年度におけるエネルギー起源のCO排出量は、家庭からのものが国内排出量の約2割を占める。」は誤り。
家庭部門からの排出量は4%である(図表1)。仮にエネルギー転換部門の40%を家庭からの排出量に割り振っても、7%弱となるだけである。

「2007年度におけるエネルギー起源のCO排出量は、家庭からのものが国内排出量の約4割を占める。」は誤り。

家庭部門からの排出量は4%である(図表1)。仮にエネルギー転換部門の40%を家庭からの排出量に割り振っても、7%弱となるだけである。


(参考)

日本の部門別二酸化炭素排出量(2014年度)(全国地球温暖化防止推進センター)


 図表1  図表2
    


世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較(2013年)環境省

世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と
各国の一人当たりの排出量の比較(2013)


                      図表3

国名

国別排出量比*

一人当たり排出量*

中国

28.7

7.0

アメリカ

15.7

16.4

インド

5.8

1.5

ロシア

5.0

11.6

日本

3.7

9.7

ドイツ

2.3

9.2

韓国

1.8

11.6

アフリカ合計

3.4

0.98

出典) EDMC/エネルギー・経済統計要覧2016年版

*国別排出量比は世界全体の排出量に対する比で単位は[%]
 
排出量の単位は[トン/-エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)]




H21年 Ⅰ-5-3 

正答: ④ 

(解答)

1997年に京都で開催されたCOP3で採択された気候変動枠組条約の議定書であり、締結した先進国等(正確には附属書Ⅰ国)に対し、2008~12年の第一約束期間における温室効果ガスの排出量を1990年比の数値目標に基づいて削減することを義務付けている。

また、削減数値目標を達成するために京都メカニズムを導入し、その中で先進国途上国が共同で温室効果ガス削減プロジェクトを途上国において実施し、そこで生じた削減分の一部を先進国がクレジットとして得て、自国の削減量に充当できる仕組みであるクリーン開発メカニズム(CDM)を導入した。




H17年 Ⅰ-5-3

正答: ②

(解答)

「フロン類のうちCFCとHFCはオゾン層破壊物質としてモントリオール議定書で生産が規制されている。一方、HCFCはオゾン層を破壊しないが強力な温室効果ガスであるため、モントリオール議定書ではなく京都議定書で削減数値目標が定められている。」は誤り。
京都議定書ではなくモントリオール議定書で削減数値目標が定められている。先進国はHCFCを2030年までに全廃。

IPCC(気候変動に関する政府間会合)第三次評価報告書によれば、人為的な温室効果ガス濃度の上昇による気候変動は、過去2万年間に生じた自然的な変化と比べても急速なものであり、低緯度付近に比べて極地に近づくほど気温上昇が激しくなる。

「気候変動枠組条約では、最終目標として「大気中の温室効果ガスの濃度を地球の気候に悪影響を与えないような濃度レベル」に抑えることを決めている。これを受けて、京都議定書では、2008年~2012年の5年間に付属書I国全体で、温室効果ガスを、基準年で排出していた量より、少なくとも10%削減することを定めた。」は誤り。
少なくとも5%削減。(※今となってはこういうこともあったという歴史的事実です。)

「地球の表面温度は太陽から降り注ぐエネルギーと、宇宙空間へ放射するエネルギーのバランスによって決まる。大気中にある温室効果ガスには、地球が宇宙空間へ放射するエネルギーを吸収し、一部を地表面に戻すことで地面を暖める作用がある。もし、大気中に温室効果ガスが全く存在しなければ、地球表面の平均気温は産業革命以前の平均気温に戻ると推定される。」は誤り。
産業革命以前にも温室効果ガスは存在していました。温室効果ガスが全くなくなると、地球は低温世界へと変貌します。

「京都議定書は2005年2月に発効したが、世界のCO排出量の中で国家として一位と二位を占める米国と中国は、京都議定書から離脱している。」は誤り。

中国は開発途上国で、CO削減の義務を負っていなかった。


(参考)

モントリオール議定書(Wikipedia)

オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書は、ウィーン条約(オゾン層の保護のためのウィーン条約)に基づき、オゾン層を破壊するおそれのある物質を指定し、これらの物質の製造、消費および貿易を規制することを目的とし、1987年にカナダで採択された議定書

この議定書により、特定フロンハロン四塩化炭素などは、先進国では1996までに全廃(開発途上国は2015年まで)、その他の代替フロンも先進国は、2020年までに全廃(開発途上国は原則的に2030年まで)することが求められた。

日本では1988に、「オゾン層保護法」を制定し、フロン類の生産および輸入の規制を行っている。



京都議定書(Wikipedia)

京都議定書は、199712京都市国立京都国際会館で開かれた3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)で同月11に採択された、気候変動枠組条約に関する議定書である。正式名称は、気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書

地球温暖化原因となる、温室効果ガスの一種である二酸化炭素 (CO2)メタン (CH4)亜酸化窒素 (N2O)ハイドロフルオロカーボン (HFCs)パーフルオロカーボン (PFCs)六フッ化硫黄 (SF6) について、先進国における削減率を1990を基準として各国別に定め、共同で約束期間内に目標値(#削減目標参照)を達成することが定められた。

また、京都メカニズムCDM排出権取引(ET)共同実施(JI))や、吸収源活動が盛り込まれている。

削減目標

議定書で設定された各国の温室効果ガス6種の削減目標。京都議定書第3条では、2008から2012までの期間中に先進国全体の温室効果ガス6種の合計排出量を1990に比べて少なくとも 5%削減することを目的と定め、続く第4条では、各締約国が二酸化炭素とそれに換算した他5種以下の排出量について、以下の割当量を超えないよう削減することを求めている。

  • 締約当時に開発途上国と見なされた中国インドなどが、その後順調な経済的発展を遂げ、非効率的なエネルギー政策で大量に温室効果ガスを発生させ、世界有数の排出国となっているにも関わらず、何ら義務を負っていないことも問題視されている。





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